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第9話

再び二人に焦点を当てることになった。

もしかしたら最初から私の判断が間違っていたのかもしれない。

耀司を見つけた。彼はコンビニでアルバイトをしていた。

店内は混んでいたので、私は横で待っていた。

彼は私を気にしているようで、数分おきにこちらを見ていた。

日差しが暖かくて眠くなってきたので、手で顔を支えてうとうとしてしまった。

声で目が覚めた。「耀司兄ちゃん、これ置いとくから、バスケットボールの試合があるから行ってくるね」

目を開けると、声の主はすでに走り去り、ただ後ろ姿が見えた。

なんとなく見覚えのある感じがした。彼が持っていた袋に目がいった。

中にはたくさんの薬が入っていた。

「外で話そう」

彼に連れられて人ひと稀まれな場所に行き、私はできるだけ穏やかな態度で話を引き出した。

彼はすでに私に対して警戒心を解いていた。彼の話は隣人たちの話とほぼ一致していたが、康成が彼を殴っていたことは伏せており、彼の口から出る康成は完璧な人物のように聞こえた……

そして、高校時代のことは全く触れてこなかった。

直感が何かがおかしいと告げていた。

局に戻るとき、タクシーに乗った。

運転手は電話をしていたが、大まかな内容はわかった。とにかく、運転手は子供の玩具を忘れていた。

「奥さん、ほんと忘れちゃったんだ、僕の記憶力の悪さは知ってるでしょ」

記憶力が悪い……

窓の外の風景がぼんやりと流れた。

耀司が持っていた袋が脳裏に浮かんだ。

ガラトラチン、それから何か……

これは。

記憶障害を治療する薬だ。
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