バレンタインデーの日。彼女に、研修中で遠くにいるため、一緒に過ごせないと伝えた。彼女は理解してくれて、平気だって言ってくれた。配達アプリでケーキやミルクティー、その他のおやつを注文した。そしてクローゼットに隠れ、サプライズを用意した。どれくらい経ったかわからないが、眠くなってきた。ドアの電子錠が音を立てて開けられ、二人の話し声が聞こえてきた。「ベイビー、これで君の彼氏に気づかれることはないよね?」「安心して、今日は出張中だから戻ってこないわよ」男が女の髪を優しく撫でた。驚きに言葉も出なかった。その男は僕の大親友、綾瀬龍治だった。彼は僕の彼女と不倫していたのだ。リビングからはラッピングテープを剥がす音がして、頼んだ宅配のものだとわかった。彼らはロウソクを吹き消し、ケーキを食べながら仲良くしていた。怒りが理性を満たし、裏切りの現場を押さえに行くつもりだった。龍治は紗奈の首に腕を回し、髪をかきわけて何度もキスをした。二人の息遣いが聞こえた。何かが引き金になるかのようだった。次の瞬間、龍治の手にある骨切り包丁が彼女の心臓に突き刺さった。もっと深くするように力強く押した。怖気づいて足が竦んでしまい、クローゼットの床に座り込んだ。大きな音が響いた。龍治がこちらを向いた視線を感じて、息もできずに口を覆った。悲鳴は喉奥に詰まったままだった。包丁を持って一歩ずつ近づき、口元には笑みを浮かべていた。最後にはクローゼットの前に立って止まった。間にはほんの少しの距離しかなかった。ドアを開ければ、服の下に隠れている僕を見つけてしまうだろう。お願い!お願いだ!あるいは神様は祈りを聞いてくれたのか、龍治は振り返りテーブルの上の水を飲んだ。一気に飲み干してからリビングに戻った。この部屋にはただ呼吸だけが聞こえていた。しばらくして、ドン、ドン、ドン。龍治は床にいる人間を骨切り包丁で何度も打ちつけている。無表情で、まるでそれが人間ではなくただの肉塊か、あるいは死んだ豚のような扱いだった。少し冷静になった。今何をすべきか。警察に通報しよう。そうだ、警察だ。サプライズをするために、携帯電話を持ってクローゼットに入った。録画を開始していた。今
Last Updated : 2024-11-06 Read more