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第004話

藤島翔太は篠崎葵を一ヶ月間探し続けていた。

彼が篠崎葵が自分の調査と異なり、そこまで悪い人物ではないと思い始めた矢先、彼女が自分の専用VIPルームの外でウェイターをしていることが判明した。

まさに彼女を甘く見ていた。

「藤島社長......これは、一体どういうことですか?」藤島翔太に付き添っていたレストランのマネージャーが、おろおろしながら尋ねた。

「彼女はここでどのくらい働いていたのか?」藤島翔太が冷たい目で問い詰めた。

「一......一ヶ月です」マネージャーは震えながら答えた。

一ヶ月!

ちょうど彼女が藤島家を逃げ出した時期だ。

彼女はただ逃げたわけではなく、むしろ上を目指そうとしていただけなのだ。

なんてことだ!

篠崎葵は藤島翔太に対して憤りと悔しさを隠せなかった。

この世界はどうしてこんなに狭いのか?

「何を言っているのかわからない、私を放して!さもなければ警察を呼ぶわよ」彼女は必死に抵抗しようとしたが、全く動けなかった。

篠崎葵は痛みに耐えながら額に汗がにじんだ。

マネージャーは恐怖で震えながら篠崎葵を叱責した。「鈴木晴、あまりにも無礼だ!」

「鈴木晴?」藤島翔太は冷たく笑い、「出所のことを隠して、名前を鈴木晴に変えたのか?」

その時、フロアリーダーと先ほど篠崎葵に代わってもらったウェイターが次々にやってきたが、彼女たちは恐れて口を開けなかった。

篠崎葵は絶望的だった。

あと二日で一ヶ月分の給料がもらえるはずだったのに。

すべてが台無しになった。

「なぜ私に対してこんなにしつこいの?なぜ!」篠崎葵は悔しさと怒りで目が赤くなり、藤島翔太の腕に噛みついた。藤島翔太は痛みで手を放した。

篠崎葵はその隙に走り去った。

彼女はまだ誰とも対抗する力がなく、ただ逃げるしかなかった。

藤島翔太が反応する間もなく、篠崎葵はレストランを飛び出し、バスに乗って数駅進んだところで降りた。

道路を歩いていると、篠崎葵は突然大声で泣き始めた。

林美月の代わりに刑務所に入ったこと、死んだ男に最も貴重な初夜を奪われたこと、出所したのに母親にはもう会えないこと。

いったい、彼女の不運はまだ足りないっていうの?!

藤島翔太という男は一体何者で、なぜ彼女を執拗に追い続けるのか?

何でだよ!

彼女が出所したばかりで無力だと思っているのか?

篠崎葵は涙で胃がむかむかし、最終的には道路の端で吐き続けた。食べていないため、吐き出したのは緑色の酸っぱい液体だった。

通りかかった女性が肩を叩きながら言った。「お嬢さん、もしかして妊娠反応ですか?」

妊娠?

篠崎葵はびっくりした。

彼女は最近、しばしば吐き気を感じていたが、まさか妊娠しているとは夢にも思っていなかった。しかし、あの女性に言われて初めて、あの夜からすでに一ヶ月以上が経過していることに気づいた。

慌てて病院に駆け込んだ篠崎葵は、手に握りしめられたわずかな現金は、検査費用には到底足りなかった。

医者は彼女に検査キットを渡し、尿検査を指示した。

十数分後、結果が出て、医者は「妊娠しています」と篠崎葵に言った。

篠崎葵は足元がふらついた。「そんな......私が妊娠したなんて」

「中絶は可能です」医者は冷たく言い放ち、次の患者を呼ぶために顔を上げた。「次の方」

篠崎葵は医院を出て、ベンチに一人で座り込んだ。心細く、途方に暮れていた感じだった。

その時、子供の可愛い声が彼女に語りかけてきた。「泣かないで......泣かないで、涙を拭いて」顔を上げると、篠崎葵の目の前にはおむつを履いた小さな女の子が立っていた。

女の子は小さな手を伸ばして篠崎葵の涙を拭おうとしたが届かず、代わりに彼女の膝を軽く叩いて慰めるような仕草を見せた。

篠崎葵の心はその瞬間、女の子に温かく包まれた。

「ごめんなさい、うちの子は感情豊かな子なんです」と、若い母親が篠崎葵の向かいに立ち、笑いながら言った。

「お子さん、とても可愛いです」篠崎葵は丁寧に答えた。

母子が遠ざかるのを見送った篠崎葵は、無意識に自分の腹を撫でた。彼女にはもう家族がいない。お腹の中の赤ちゃんだけが、彼女の唯一の血縁だった。

母親になる喜びと期待が心に沸き上がった。

が、同時に不安も押し寄せた。どうやってこの子を育てるの?

中絶するお金すらないのに......

翌朝早く、篠崎葵はかすかな希望を抱いて刑務所の門前に立ち、守衛に懇願した。「夏井淑子さんに会わせていただけませんか?」

篠崎葵が刑務所に入った時、夏井淑子はすでに数年の刑期を過ごしており、彼女の面倒をよく見てくれていた。夏井さんのおかげで多くの苦難を避けられた。夏井淑子の素性については詳しくは知らなかった。ただ、彼女が裕福であることは感じ取れていた。

毎月、外部から夏井さんに多額の食費が送られてきていたのだ。

篠崎葵が出所する際に持っていた数千円は、すべて夏井さんが刑務所内で彼女に渡してあげたものだった。

「夏井淑子は一ヶ月以上前に出所したよ」守衛は時間を計算しながら言った。

「何ですって?」篠崎葵は驚いた。

「あなたは篠崎葵さんですね?」と、守衛が突然尋ねた。

「そうです」と篠崎葵はうなずいた。

「夏井淑子が出所する際に、あなたに渡すようにと電話番号を残していきました。あの日、あなたが出所した時、豪華な車が迎えに来たから呼んだけど、気づかなかったんでしょう」守衛は電話番号を篠崎葵に手渡した。

「ありがとうございます」

それから二時間後、篠崎葵は南都の最高級の私立病院のVIP病室で、かつての刑務所仲間、夏井淑子に再会した。

夏井さんは目を閉じ、病状が深刻そうな表情でベッドに横たわっていた。白髪が多いにもかかわらず、彼女の姿勢には上品さが漂っていた。

篠崎葵には、若い頃の夏井さんが美人だったことがはっきりとわかったが、なぜ彼女が刑務所に入ることになったのかは分からなかった。

「夏井さん?」篠崎葵はそっと声をかけた。

夏井淑子はゆっくりと目を開け、篠崎葵の姿を見て興奮した様子で咳き込んだが、やがて落ち着きを取り戻して言った。「篠崎さん、やっと会えたわ。あの馬鹿息子にあなたを連れてくるように言っておいたのに、あなたが田舎に帰ったってずっと言ってたのよ。今日はやっと戻ってきてくれて、本当に嬉しいわ」

「本当に今日、田舎から戻ってきたばかりなんです、夏井さん」篠崎葵は夏井さんの話に合わせて言った。

彼女は、夏井さんが言っていた「馬鹿息子」が夏井さんの息子であることを悟った。

篠崎葵はようやく理解した。彼女が無罪で早期に釈放されたのは、夏井さんの息子が多大な労力を費やして彼女を救い出したからだった。

あのような豪族の中で、彼女を救ってくれたこと自体がすでにありがたいことだ。夏井さんに彼女のような友達がいさせるはずがない。

だから、夏井さんに「田舎に帰った」と嘘をついたのも無理はない。

「あなたが刑務所で私を世話してくれなかったら、私は今も生きていなかったし、息子にも会えなかったでしょう」夏井さんは感極まって涙を流した。

篠崎葵は首を振った。「もうその話はやめましょう、夏井さん。あの時、あなたをお世話したのは、何かを返してもらおうと思ってありませんから......」

彼女はどうやって重病の夏井さんにお金を借りるべきか、言葉を選びながら考えた。

そして、篠崎葵は覚悟を決め、唇をかみしめて言った。「夏井さん、こんな時にお願いするのは本当に申し訳ないんですが、どうしても困っていて......」

「どうしたの?ここまで来たのだから、困っていることがあれば遠慮なく聞かせなさい」夏井淑子は優しく問いかけた。

「夏井さん、少しお金を貸していただけませんか?」篠崎葵は頭を垂れ、目を合わせる勇気がなかった。

その時、後ろから温かな声が聞こえた。「いくら必要なのか、私が用意する」

篠崎葵は驚いて振り返り、声も震えていた。「どうしてあなたがここに?」

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