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第099話

篠崎葵の顔は青ざめたり赤くなったりと変わり、言い返すことができなかった。

彼女の顔からは、ここ数日間ずっと浮かんでいた生き生きとした笑顔が消え、再び以前のような控えめで、淡々として孤独な表情に戻っていた。

その可憐な様子は、桜庭隆一の目には非常に哀れに映った。

桜庭隆一は彼女が苦しみながらも強がる姿を見るのが大好きだった。そんな状態だからこそ、この遊びが面白くなるのだ。

「この間、花が咲くように急に幸せそうだったと思ったら、やっぱり俺の従兄が君に気があるってことか。でも君、調子に乗るのがちょっと早すぎだろ?まだ従兄が君に目を向けたのはたった2日だけだってのに、もう彼の本命の女に張り合おうとしてるとはね。

すげぇ度胸だな!

普段おとなしい顔してるからって、こういうときは大胆に出るもんだな。

先には俺の従兄、後には杉山智正、それに俺まで。

俺たちの誰か一人が足を踏み鳴らせば、南都全体が揺れるってもんだ。

君の見る目、ほんとにすごいな!」

篠崎葵は言葉を失った。

桜庭隆一はいつも篠崎葵の前で言いたい放題だが、彼は口に出すほど冷酷ではなく、三人の中で一番彼女に優しい人物でもあった。篠崎葵にとって、桜庭隆一はわがままで、何でも好き勝手にする大きな子供のような存在だった。

彼の言葉は無遠慮だが、藤島翔太のような深い策略や計算はない。

桜庭隆一の嘲笑や皮肉に対して、篠崎葵は一言も返さなかった。

彼女の心中には、藤島翔太が彼女をどう処分するのか、そのことだけが渦巻いていた。

篠崎葵が黙ったままなので、桜庭隆一は心の中で彼女の冷静さを笑っていた。まるで「飢えた犬は棒を恐れず」ように平然としている様子だ。さらに数言冷やかしてやろうとした時、前方から声がかかった。「隆一、早く来なさい、小舅妈(母方のおじの妻)を見に行くのよ!」

「はい、今行きます!」桜庭隆一はすぐに走り出した。

小舅妈を見に行く?

それはきっと夏井淑子だろう。

夏井淑子はずっと藤島家に認められることを望んでいた。彼女がそのことを藤島翔太に直接言ったことは一度もなかったが、息子が藤島氏家族のトップに立ったばかりで、息子が抱える問題が山積みなのを知っていたため、夏井淑子は自分の願いを息子に伝えることは避けていた。

だが、篠崎葵は知っていた。夏井さんはずっと藤島家に認められたいと願ってい
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