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第64話

午後七時半にレストランに着くと、渡辺綾子は個室にいることを聞き、振り返って提案した。「大堂で座りませんか?今夜『家族探しの記録』の後半が放送されるんだから!」

森川律子は急いで渡辺綾子の腕を引っ張り、高橋優子の隣にいる白くて可愛らしい北田菜奈を指さした。

小さな女の子の黒白はっきりした瞳は水で洗われたように澄んでいて純真で、渡辺綾子はすぐに高橋優子とその小さな養母が番組のゲストであったことに気づいた。森川律子はその小さな女の子がそれを見て傷つくのを恐れていたのだ。

何も気にしない性格の渡辺綾子は申し訳なさそうに高橋優子に微笑み、咳払いをしてから尋ねた。「どの個室ですか?」

北田菜奈は高橋優子の手を引っ張り、「お姉ちゃん、私は見たいです。番組にはお母さんがいます」と手話で伝えた。

小さな女の子は微笑んでいたが、その目はすでに赤くなっていた。

高橋優子は微笑みながら北田菜奈の頭を撫で、「大堂に席があるならそこに座りましょう。菜奈も見たいと言ってるから」と言った。

北田菜奈は目の前の大きなお兄さんやお姉さんたちに軽く頭を下げた。

『家族探しの記録』の番組が夜八時に定刻通りに放送を開始した時、彼らの注文した料理はまだ運ばれていなかった。

レストランの大堂では、食事をしていた客や料理を待っていた客たちの視線が皆テレビ画面に向けられていた。

一週間の間に発酵した後、この番組の熱度は非常に高まっていた。

午後八時の放送開始とともに視聴率が急上昇し、三大ネットワークのプラットフォームでの再生数も驚異的だった。

番組の冒頭で、司会者の筒井剣夜が「視聴者の皆さん、戻ってきてくれてありがとう」と言った後ろで、高橋家族はまだ怒鳴り合っていた。

画面の後方でほとんど半身だけ映っている北田静子は、怒りで胸が上下し、顔色も悪かった。北田菜奈は自分の母親をじっと見つめ、涙をこらえながら目を瞬きもせずにいた。

すぐに本題に入り、録音が流された。

「高橋優子、お前みたいな恥知らずのクソ女、よくも逃げ回っていられるな!お前がこんなに番組を怖がるって、やっぱりクズなんだよ!お前みたいな女が高橋村のあの跛の嫁になるのももったいないくらいだ!」

スタジオ内には高橋直步、高橋家の大奥様、高橋家の叔母、高橋健介が得意げに罵る声が響き渡っていた。

この録音は、高橋家族の計算高さと悪
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