第70話

その子は、もっと多くの彩花を救いたいと思っているんだな。

どうりで、進が高橋優子を賢いと言ったわけだ。

自分の目的を達成するために、侮辱にも耐え、辛抱強くしていた。

これは、高橋優子が非常に安定した感情の核を持っていることを示していた。まるで森本家の人のように。

「コンコンコン——」

ノックの音を聞いて、森本朝宏はタブレットの画面をロックして、眼鏡をかけた。「何か用か？」

「旦那様、遅い時間ですので、お休みになられてください」松沢初江は書斎のドアを少し開け、小声で声をかけた。「明日の朝、医者が来て、旦那様と彩花様の健康診断をする予定です」

「うん、分かった」森本朝宏は横を向いて松沢初江に言った。「君も早く休め」

今夜、眠れなかったのは森本朝宏だけではなかった。佐藤峻介も同様だった。

佐藤峻介はすでに退院して佐藤家で静養していた。

彼は今日の夜に『家族探しの記録』の後半が放送されることを知っていたし、高橋優子が番組に参加していることも知っていた。

番組の放送時間中、彼はずっと松本里美とビデオ通話をしながら彼女の台本を一緒に読んでいた。

松本里美がライトを消して休んだ後も、佐藤峻介はどうしても我慢できず、番組の動画を開いてしまった。

佐藤峻介は実際、高橋優子が第二期の番組に登場し、あのようなことを話すとは思ってもみなかった。

彼はトレンドやコメントで、高橋優子が在学中に受賞した際の演説動画が掘り起こされていたのを見た。

動画の中……彼の夢に現れたポニーテールをした若々しい顔が、人口拐売に対する関心を呼びかけ、買い手の量刑を引き上げることを訴える姿が生き生きとしていた。英語のスピーチでも日本語のスピーチでも、すべてが力強かった。

演説台の上の高橋優子は、そのように輝き、全身から確固たる信念を放っていた。

佐藤峻介はようやく気づいた。あの日、自分が高橋優子に「強姦犯の子だ」と言った時……なぜ高橋優子の反応があれほど大きかったのか。

それは、彼女の心に一生治らない傷を負わせる言葉だったからだ。

彼女の生母は拐売され、それによって命を失ったのだ。

だからこそ、彼女は何年もかけて拐売買方の量刑引き上げに尽力してきたのだ。

画面の中で、涙目の高橋優子はマイクを握りしめ、話を続けていた。「私のお母さんはもう亡くなっていますが、私は彼女に伝えた