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第74話

高橋優子は家を仲介業者に預けて貸し出すことにした。地方の小さな町なので賃料は高くないが、北田菜奈の生活費の一部を補助することはできた。

新しい学校に転校することに、北田菜奈はとても喜んでいた。以前の学校に対する未練もなく、どこか安堵のような感情も見受けられた。

高橋優子は北田菜奈を光風市中学の寮まで送っていき、北田菜奈のルームメイトが皆とても良い子たちだと分かり安心した。

そして生理がすでに一ヶ月近く遅れていることを思い出し、光風市中学から寮に戻る途中、妊娠検査薬を購入した。

初めての使用で、高橋優子は使い方をしばらく思案した後、ようやく正しい使い方を見つけた。

五分後、検査薬に現れた二本の線を見た瞬間、頭が真っ白になり顔から血の気が引いた。

どうして?一度で妊娠するなんてことがあるの?

信じられない高橋優子は、外に出てもう数本の妊娠検査薬を買ってきたが、結果はすべて同じだった。

彼女は洗面台に並べられた二本線の検査薬をじっと見つめ、くるりと回って洗面台にもたれながら指の関節を噛んだ。

森本進はまだ海外から戻っていないようだった。

たとえ森本進が日本にいたとしても、彼に話して何になるというのだろう?

結局、中絶するしかない。

携帯電話が振動した。

それが渡辺綾子からだと分かり、高橋優子は電話に出た。「渡辺先輩……」

「優ちゃん、研究室に新しい人がもうすぐ来るのよ!森由教授があなたに声をかけて、一緒に紹介しに来てくれって!」渡辺綾子が言った。

「分かりました。すぐに行きます」

電話を切った高橋優子は、妊娠検査薬をゴミ箱に捨て、上着を着て外に出た。

研究室に到着すると、森由教授はすでに皆に常盤太郎を紹介していた。

高橋優子が入ってきたのを見て、森由教授は常盤太郎に向かって言った。「こちらが高橋優子だ……」

常盤太郎は振り向いて高橋優子を見ると、見覚えがある気がしたが、どこで見たのか思い出せず、笑顔で手を差し出した。「こんにちは、僕は常盤太郎です」

研究室にいる他の人たちは、ほとんどが常盤太郎を知っていた。以前、試合に参加したときに見かけていて、日本のチームを見て、常盤太郎が彼らのチームに混じって食べ物を分けてもらったのだ。

何度か繰り返すうちに、みんなと親しくなった。

「こんにちは」高橋優子は常盤太郎の手を握り返した。

「ど
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