共有

第105話

「それなら問題ない」森由教授は優子を微笑みながら見つめた。

「昔、うちの妻が妊娠を理由にチャンスを奪われたことがあってね。だから、君たち若者には同じことを経験させたくないんだ。君が身体に問題がないなら、君の能力を信じて送り出せるよ。今回の交流会には危険な実験もないしね。だけど、もし途中で無理だと感じたらすぐに君を戻すからね」

「ありがとうございます!」優子は森由教授に深く感謝し、「決してご期待を裏切りません!」と力強く言った。

「でも、経験者として言っておくよ。シングルマザーは簡単じゃない。君はもう離婚しているし、この子を本当に産むつもりなのかい?」森由教授は年長者として優子を心配した。

森由教授がこの子を峻介の子供だと思っていることに気づいた優子は、特に説明を加えずにこう答えた。「私の養母と妹はもう亡くなりました。彼女たちが亡くなったのは、多少なりとも私のせいです。だから、今度こそ……家族を失いたくないんです」

その言葉を聞き、森由教授は黙って唇を引き締め優子の肩を軽く叩いた。「分かるよ。行っておいで」

森由教授のオフィスを出た後、優子は進に電話をかけた。

決断を下すのに必要なのは、ほんの一瞬の勇気だった。

優子は森由教授と一緒に国外へ行き、この子を産むことを決めた。進も子供の父親として知る権利があると思った。

電話がつながった。

「今、森由教授のところに行って、国外に行くことに決めたわ」優子は言った。

「分かった」進は穏やかに答えた。「夜8時半には光風市に着くから、家で話そう。君が納得できるような、詳細な計画を立てよう」

進は以前、もし優子が望まないなら全力で子供と彼女のプライバシーを守ると約束していた。

「私は……この子を自分のそばに置いておきたい」優子は、自分のこの願いがわがままなのではないかと不安に思った。

「いいよ!君の願い、すべて聞き入れる!」進はほとんど躊躇せずに答えた。まるで、優子がこの子を産んでくれるなら、どんな願いでも叶えるかのように。

進はまるで子供をあやすかのように優しく言った。「優ちゃん、今ちょっと忙しいから、夜にまた話そうね?」

「分かった、夜にまた」優子は電話を切ったが、なぜか緊張していた。

おそらく彼女がずっと尊敬し仰いでいた男性が、あのアパートで強引にキスしてきたことを思い出してしまったからだろう
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status