第60話

松本里美は驚いた表情を見せた。まさか相手は佐藤峻介を目当てにしているのだろうか？

佐藤家は確かに霧ヶ峰市で一番の名家だが、イーエフ高級ブランドのような世界的なラグジュアリーブランドと佐藤家に何の関係があるというのか。

「正直に言って、あなたが人を助けたとき、その人がイーエフ高級ブランドの次男だって知ってたの？」飯田真希は興味津々で尋ねた。

「何？」松本里美は戸惑いながら答えた。「人を助けた？私はイーエフ高級ブランドの次男なんて全然知らないわ！」

その言葉を聞いた瞬間、松本里美は何かを思い出したようで、心臓が急に高鳴った。

彼女は心の中にいくつかの推測が浮かんでいたが、あまり考えたくなかった。「峻介お兄さんの彼女を探しているって言ってたけど…...峻介お兄さんと知り合いかもしれないわね。後で彼に電話して聞いてみるわ」とだけ言った。

「違うよ！」飯田真希は眉をひそめて言った。「イーエフ高級ブランドの次男は私があなたのマネージャーだと知っていて、あなたにお礼を伝えてほしいって言ったのよ。7年前、イタリアであなたが彼を助けた時、名前を言わずに倒れてしまったけど、倒れる前に彼の彼女があなたを引き上げて人工呼吸を止めたんだって。あなたは怒って彼の彼女の名前を呼んだらしいし、それに霧ヶ峰市立大学の制服を着ていたんだって。彼はどの学校の制服か分からなかったから、佐藤峻介という名前で調べて、何年もかかってやっとあなたを見つけたんだって！それで、もし都合が良ければ、数日以内にあなたと食事をしたいって言ってたの」

松本里美は台本を握りしめた手に力が入った。

7年前、その頃佐藤峻介は高橋先輩と付き合っていた。

もし7年前にイタリアでのことなら、それは佐藤峻介が高橋先輩と一緒にイタリアに行って、コンテストに参加していた時のことだろう。

松本里美の表情が暗くなったのを見て、飯田真希も何かを察したようで、そっと聞いた。「イーエフ高級ブランドの次男は命の恩人を間違えたの？もしかして…...佐藤峻介の植物状態だった元カノが目覚めたの？」

松本里美は唇を噛んで顔を上げた。「飯田さん、その広告は断りましょう！イーエフ高級ブランドの次男は人違いをしている！」

「断るの？里美ちゃん！イーエフ高級ブランドの広告が何を意味するか分かってるの？これはあなたの大きなチャンスだよ！イーエフ高級