第19話

峻介は瑛介の言葉を聞きながら眉をさらにひそめ、顔に現れた苛立ちを隠すことなくタバコの灰を落とした。

「もし君が優子の裸の写真を霧ヶ峰市立大学に貼らず、僕の姉ちゃんに『黙って出て行かなければ、これは優子の一生の地獄の始まりだ』って脅してなかったら、今頃僕たちは姉ちゃんを見つけられなかったかもしれないぞ」

まばらな竹の影が風に揺れ、優子の目元に落ちる髪が彼女の黒い瞳の中の表情を隠していた。

彼女はスマートフォンを握りしめ、目の周りが痛みで膨れ上がったのを感じた。

そうか、これが彼女の写真を霧ヶ峰市立大学中に貼り付けた理由だったのか。

峻介が彼女を使って里美を脅していたなんて。

なんて馬鹿げた話なんだろう。

「結局、君は何を言いたいんだ？」峻介は苛立ちを隠さずに尋ねた。

瑛介はタバコを消し、峻介に近づいて話した。「峻介、あの日君が優子とは何もなかったって誓っても、実際にはこのことが姉ちゃんの心に刺さったままだったんだ。君も本当は確信がないんじゃないか？」

核心を突かれた峻介の瞳はさらに暗くなった。「それで？」

「僕が思うに、優子はもうすぐ静子に助けを求めるために電話をかけてくるはずだ。その時、峻介、君が優子を呼び出して、彼女に以前君がかけられたのと同じ薬をかけるんだ！悠斗は優子のことが大好きだろう？ちょうどいい機会だから、悠斗を成就させてやれ。悠斗が優子は処女だと証明してくれれば、姉ちゃんも別に気にしなくなるだろう。仮に君と優子があの夜本当に何かあったとしても、悠斗が優子を手に入れれば…彼は絶対に君に感謝するだろう！」

「その時になって、離婚届を出すことが優子の策略であったとしても、彼女が他の男と寝たら、もう何の尊厳もなく君にしがみつくこともなくなるだろう？これが優子から完全に解放されるいい機会だ」

峻介が返事をしなかったのを見て、瑛介は笑みを浮かべて聞いた。「峻介、君はまさかまだ優子に未練があって、彼女を捨てられないとか思ってるの？」

「一体何を言ってるんだ？」峻介は襟を引っ張りながら言った。

「だったら僕の言う通りにしろよ！見ろ…この前僕のやり方で優子の裸の写真をばら撒いたから、姉ちゃんはここに留まってくれたんだ！今回も僕のやり方を聞けば、姉ちゃんは君のプロポーズに応じてくれるに違いない！」

瑛介が言い終わると、峻介の携帯が鳴った。

彼はポケットから携帯を取り出し、画面を一瞥した後、電話を耳に当てながら入院棟に向かって歩き出し、極めて優しい声で言った。「目が覚めたんだね。うん…僕はまだいるよ。瑛介と一緒に下でタバコを吸ってただけで、すぐに上がるからね！」

峻介が急ぎ足で去っていった姿を見ながら、優子は追いかけて説明する気力を失っていた。

彼女は携帯画面上の覚えた番号を消し、携帯をダウンジャケットのポケットにしまい込んだ。そしてベンチで静かに座り、ほとんど顔全体をマフラーで包んでいた。

どれくらいの時間が経ったのか分からないが、冷気が優子の足首から足にかけてじわじわと上がってきた。

彼女はポケットに入れていた拳をゆっくりと緩め、再び携帯を取り出し、峻介に電話をかけた。

峻介の人柄に対して、優子はまだ少しだけ期待を持っていた。

「何の用だ…」

峻介が意図的に声を低くしたのを聞いて、彼女は静かに話し始めた。「静子に会ってきた。静子が霧ヶ峰市に来たのは、直步が私の祖父の連絡先を求めて結婚のための家と結納金を出させようとしたからなの。静子はそれを知らず、教えたくもなかった。でも、あの人たちは『家族探しの記録』って番組に出て人を探そうとしていて、静子は番組の招待で霧ヶ峰市に来たの。空港で偶然あなたに会って話しかけようとしたら、人混みに押されて松本さんにぶつかったのよ。空港の監視カメラと番組の件は調べればすぐに分かるわ」

「君は元の養母のために情けを求めているのか？」