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第0013話

考えが一瞬よぎったその時、病室のドアが突然開いた。「紗月!本当にしつこいわね!」

怒りに満ちた表情で入ってきたのは、温香だった。彼女は紗月の手にあるペンダントを見て、眉をさらに険しくした。

温香はヒールを鳴らしながら数歩で紗月に近づき、そのペンダントを奪い取った。「涼介のものがどうしてあんたの手にあるのよ!」

「彼が落としたものよ」紗月は温香の顔を一瞥し、何事もなかったかのように淡々と答えた。「あんたが持ってきたのなら、彼に返して」

「ふん」温香は引き下がらず、自分の首からペンダントを取り出し、誇らしげに見せつけた。

「見える?これ、涼介とのペアよ。涼介のも半分、私のも半分。これは私たちの愛の証なの。紗月、最初から負けていたのよ!」

紗月の視線は、温香が握っているペンダントに釘付けになった。

本当に全く同じペンダントだ。

どうして温香が持っているのか?

紗月は疑問に思いながらも、温香を誘導して尋ねた。「愛の証?いつのこと?」

「20年前のことよ」温香はまったく動じることなく答えた。「20年前の事故で、私が涼介を助けたの。それで、私たちはお互いに半分ずつペンダントを交換したのよ!」

「嘘をついているわ!」紗月は冷笑を浮かべた。あの日、涼介を助けたのは紗月自身だった。温香であるはずがない!

温香の顔色が一瞬変わった。彼女自身も長年、その嘘を信じ込んでいた。だが、紗月にあっさりと暴かれてしまった。

「何を言ってるの?紗月、あんたに涼介とのことをどうこう言う資格はないわ!」温香は怒りをあらわにし、「嘘だというなら、どうして涼介とのペンダントが私にあるの?」と詰め寄った。

紗月も分からなかった。これは偶然なのか?

「手に入らないものを悪く言ってるだけでしょ!」紗月が黙り込んだのを見て、温香は証拠がないと確信し、さらに横柄な態度を取った。

「今、正真正銘の中川夫人は私よ。紗月、これ以上私の婚約者に近づくなら、容赦しないわ!」

その時、看護師が耐えかねてドアを開けた。「言ったでしょ?佐藤さんは流産したばかりで休養が必要なんです。何を騒いでいるんですか!」

看護師は不満をぶつけながら、ドアを乱暴に閉めた。

温香は驚愕し、紗月を指差して言った。「まさか......あんた、妊娠してたの?それって......涼介の子?」

紗月は何も答えなかった。

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