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第0030話

つまり、紗月もずっと彼を騙していたということか。

彼女はすべてを知っていたのに、なぜ言わなかったのだ?

「バンッ!」

涼介はテーブルを激しく叩いた。ペンダントがテーブルの上を滑り、男の怒りと悔しさをそのまま表現したかのように傷を残した。

神田は傍で頭を下げ、無言で涼介の冷たい視線を感じ取っていた。今、涼介の表情は非常に険しく、まるで氷のように冷たく、恐ろしいほどだった。

......

翌朝、紗月が目を覚ました時、枕は涙で濡れていた。

また、あの少年が高所から落ちる夢を見たのだ。その少年が涼介だったとは。

その事実を知ったのは、ペンダントを見つけた時だった。

心がざわつく中、彼女はベッドからゆっくりと起き上がり、準備を整えた。

そしてドアを開けると、そこには待っていた人物がいた。

陸はカジュアルなシャツ姿で、紗月の顔色を見て驚いた。「どうした?顔色が悪いぞ」

紗月は振り返り、ドアを閉めて感情を隠そうとした。

「大したことじゃない。ただ、寝不足だけ」

陸は眉をひそめ、少し躊躇してから尋ねた。「昨日の結婚式のことを考えてるのか?」

つまり、涼介のことか?

紗月の動きが一瞬止まったが、すぐに微笑みながら答えた。「私は過去に戻ることなんてしないわ」

陸は彼女の背中を見つめ、その言葉を本当に信じたいと思った。

2人は車に乗り込み、陸はバックミラー越しに紗月の様子をうかがった。だが、彼女はただ窓の外を見つめていた。

しばらくして、彼らはサーキットに到着した。

この一年間、紗月が刑務所にいる間に、陸は世界中を飛び回り、様々なレースに出場し、少しずつ成績を上げていった。

今ではレース界でも「高橋陸」の名前を知らない者はいない。

人々は彼を「ダークホース」と呼んでいた。

トレーニング場の前では、一人の男が焦って歩き回っていた。

陸を見つけると、すぐに飛びついてきた。

「お前、やっと来たか!早くしないとみんな待ってるぞ!」

しかし、その男は紗月の姿を目にして、動きが止まった。「この人は?」

陸は笑顔で紹介した。「紗月、こちらは中村健二、俺のマネージャー。健二、彼女は佐藤紗月。今日彼女が俺の助手を務めるんだ」

健二は目を丸くして驚いた。「それはダメだ!」

彼はスムーズに陸を脇に引いた。「ありえない!トムがもう中で待ってるんだぞ!」

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