第0024話

温香は、涼介がドアの方を見つめている姿を見て、彼の腕に絡めていた手を揺らしながら甘えるように言った。「涼辰、何を見ているの？ 紗月は本当に恐ろしいわ。まさか私を殺そうとしていたなんて！ でも、涼辰がすぐに来てくれて本当に良かった......」

温香の声を聞き、涼介の心には淡い嫌悪感が広がった。

監視カメラの映像を見ていなかったわけではない。

彼はそっと温香の手を引き離し、席を立った。

「帰ろう、家に」

1年後。

霞ヶ丘市では大きな喜び事が話題となっていた。中川家と藤崎家が盛大な結婚式を行うというのだ。式は最高級ホテルで執り行われ、豪華な車が列を成して駐車場に入り込んでいった。

メディアも多数詰めかけ、商界の大物が藤崎家の令嬢を迎える様子を記録しようと必死だった。

その同じ日、霞ヶ丘市女子刑務所の鉄扉がゆっくりと開いた。

その日は、ちょうど新郎である涼介の元妻、かつての佐藤グループの令嬢、紗月が白い服を着て外へ出てくる日でもあった。

彼女は模範的な服役態度が評価され、減刑を受け、予定より早く出所したのだ。

久しぶりの自由な空気を吸いながら、紗月は手をかざして太陽を遮った。この一年間、彼女は面会に来るすべての人を拒否していた。

父が涼介の手で会社を破産させられ、亡くなった後、彼女にはもう身寄りがなかった。誰が彼女に会いに来ようと、何の意味も持たない。

虚偽の哀れみなど、彼女には必要なかった。

歩みはゆっくりで、以前よりもはるかに痩せて見えたが、その目には依然として強い意志が宿っていた。

少し離れた場所には、一台の控えめなスポーツカーが待っていた。

ドアが開き、陸が心配そうな顔をして降りてきた。

「バカだな。あの時、君は牢屋に入る必要なんてなかったんだぞ。弁護士が揃えた証拠で、無罪だって証明できたのに......何で自分を苦しめるようなことをするんだよ」

紗月は説明しようとはせず、ただ微笑んだ。その笑みは目まで届かず、どこか投げやりなものだった。

陸はしばらく彼女を見つめていたが、何かが変わっているような気がした。しかし、それが何なのかはわからなかった。

「ここも悪くない場所だよ」

どんな苦しみも、彼女は乗り越えた。毎晩繰り返される悪夢を見ながらも、佐藤家を陥れた人々の顔は彼女の心に深く刻まれていた。

例えば、あの男......