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第0002話

しばらくして、涼介はスーツの襟を整え、無表情のまま弔問堂を後にした。

外で待っていた女性がすぐに駆け寄り、彼の手を優しく取りながら言った。「涼介、どうだった? 問題は全部解決したの?」

「うん」涼介は淡々と答え、反対の手で彼女の手を取りながら、階段を降り始めた。そして、静かに言葉を残した。

「すべてが終わった」

藤崎温香は彼の言葉に潜む抑えた感情を感じ取りながらも、それ以上は聞けず、ただ心配そうに後ろを振り返った。

願わくば、本当にすべてが終わっていることを。

屋内では、紗月が痛みをこらえながら、ふらふらと立ち上がり、服を整えた。

部屋の乱れた様子が先ほど何が起こったかを如実に物語っていた。ロウソクも、黄布も床に散らばり、その場で涼介は紗月をやったのだ。

彼女の亡くなった父親の前で!

父親が死んでなお、涼介は紗月を徹底的に屈辱したのだ!一体どれほど深い憎しみがそこにあったのだろうか。

紗月は顔を上げ、灰色に変色した父親の写真を見つめた。先ほど涼介が吐き捨てた冷たい言葉が頭をよぎる。

「お前と結婚したのは、お前のあの腐った父親に復讐するためだ。奴がようやく死んだ。残るはお前だけだ。ちゃんと罪を償えよ」

紗月は心身ともに疲れ果て、膝をつき、涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。「お父さん、ごめんなさい......」

佐藤家が一夜にして破産したニュースはすぐに各大手メディアの見出しを飾った。そして翌日、別のエンタメニュースが瞬く間に話題となり、トップに躍り出た。

まだ父親を失った悲しみから抜け出せない紗月のもとに、城外の別荘に不意に訪れた不審な一団が、家具やソファを次々と運び出し始めたのだ。

階下の騒ぎがあまりに大きく、目を腫らしていた紗月が降りてくると、家政婦の中村さんが慌てて駆け寄ってきた。「奥様!この人たち、一体どこから来たのか。いきなり家具を運び出し始めて、止めようとしても全然聞いてくれないんです!」

紗月は少し冷静になり、運び出そうとしていた男性の一人を止めた。彼は玄関にあった清朝時代の花瓶を持ち上げようとしていた。「何をしているの? 不法侵入で訴えてもいいのよ!」

「不法侵入?この家の所有者は中川さんではありませんか?私たちは彼の依頼で家具をすべて運び出しているんです。もしご迷惑をおかけしたなら、申し訳ありません」

紗月は愕然とした。そうだ、彼女は危うく忘れるところだった。父がこの家を彼女に結婚祝いとして買ってくれたとき、彼女は涼介に全幅の信頼を寄せ、名義を彼一人のものにしてしまったのだ。

では、今、涼介は一体何を考えているというのだろうか?

紗月はスマホを取り出し、涼介に直接電話をかけようとした。その瞬間、スマホが何度か振動し、彼女は誤ってメッセージを開いてしまった。そこにはこう書かれていた。

【今朝のインタビューにて、中川グループのCEO、中川涼介氏が、間もなくエンタメ業界の新星、藤崎温香さんと結婚式を挙げると発表しました。なお、涼介氏は既に前妻、佐藤紗月さんとの離婚手続きを完了しているとのことです】

紗月はスマホを握りしめた。離婚?

そんなこと、まったく知らなかった。

「奥様、これ......どうしましょう?」中村さんは事の重大さを察して、さらに焦りを募らせていた。

旦那様が奥様にここまで残酷なことをするとは、あまりにも酷い仕打ちではないだろうか。

「警察を呼んで、すぐに!」紗月は数秒の沈黙の後、ついに口を開いた。これが、彼女が涼介に会える唯一の手段だったからだ。

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