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第0026話

陸は少し躊躇し、「本当に入るのか?」と問いかけた。

彼は紗月が耐えられないのではないかと心配していた。

「もちろんよ」

紗月は短く答え、そのままホテルの正門へと向かった。

陸もすぐに後を追い、二人は持っていた招待状のおかげでスムーズに中へ入った。

一方、メイクルーム。

温香は華やかに装い、後ろには数人のブライズメイドが続いていた。彼女たちは皆、笑顔で温香にお祝いの言葉を掛けていた。

温香も微笑みながら、それらの言葉を受け入れたが、すべては表面的なことだった。

そのとき、メイクルームのドアが開かれ、国輝が険しい顔をして立っていた。彼は温香を連れ出し、式を始める準備が整ったことを知らせに来た。

温香は興奮していて、父親の様子には気づかず、満面の笑みを浮かべて父の腕を取ると外へと歩き出した。

赤いカーペットの上、式場の扉がゆっくりと開かれた。温香は真っ白なヴェールを被り、オーダーメイドのウェディングドレスに身を包んで輝いていた。彼女はカーペットの端に立ち、その先にはスーツ姿の涼介が待っていた。

ヴェール越しに涼介を見つめながら、温香は胸が高鳴った。

この男は、ついに温香のものになった......

周囲の注目の中、結婚行進曲が優雅に流れ始め、温香は父親の手を取りながらカーペットを歩き始めた。

「新婦の父親は、新婦を新郎に引き渡してください」

司会者の声に従い、国輝は温香の手を涼介に渡した。

二人は手袋をしていた。

互いの温もりを感じることはできなかったが、温香の顔には満面の笑みが広がっていた。

「式を始める前に、二人の愛の証となる信物を皆様にお見せしたいと思います」

礼儀正しく托盤を持った係の女性が、半分に割れたペンダントを皆に見せた。

その瞬間、紗月の目が微かに光った。「まあ、なんて偶然なの......」

彼女は軽く笑みを浮かべ、観客の注目を浴びながら舞台へ向かって歩き始めた。

「司会者さん、ちょっと待ってもらえますか!」

澄んだ声が柔らかい背景音楽を切り裂き、場内に響き渡った。

涼介はその声を真っ先に聞き分け、振り返ると目には警戒の色が宿った。

紗月は瞬きをし、まったく気にしない様子で微笑んだ。

温香は、その顔を見た瞬間、背筋が凍りついた。

そして、信じられないという表情で、その見慣れた顔を見つめ、指がかすかに震えた
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