共有

第0023話

一石を投じると、大波が立ったように、傍聴席からは一斉に息を呑む音が響いた。

たとえ本当の殺人犯でも、ここまで直接的に罪を認める者はほとんどいない。

陸は驚愕の表情を浮かべた。

紗月は一体なぜこんなことを言うのだ!

裁判官もまた、驚きを隠せない様子で言った。「ここは法廷です。あなたの発言には責任が伴います」

紗月は真っ直ぐに裁判官の目を見据えた。

温香が自分を地獄に突き落とそうとしている。もしかすると、この方法しか涼介に本当に佐藤家を放ってもらう手段はないのかもしれない。

「これは全て事実です。私の心の底からの本音でもあります。私は温香が憎くてたまりません。彼女が死ねばいいと思っています!」

「紗月!お前、正気か!」

陸は崩れ落ちるように叫び、傍聴席から立ち上がり、紗月の方に駆け寄ろうとした。

「静粛に!」裁判官はハンマーを叩き、場を制した。

警備員がすぐに陸を外に連れ出した。

法廷は再び静けさを取り戻した。

裁判官は被告席に立つ紗月を見つめ、涼介と一瞬視線を交わすと、再び低い声で問いかけた。「被告、あなたは本当に殺意を抱いていたと確信していますか?」

森田は慌てて立ち上がり、弁解しようとしたが、裁判官は手を挙げてそれを制した。

「被告自身に話をさせてください」

紗月の視線が温香の方へと向かう。予想通り、温香の目には喜びが溢れていた。

彼女はついに自分を追い詰めることができたとでも思っているのだろうか?

一方で、涼介は眉をひそめて心配しているかのような表情を浮かべていた。

なんて滑稽なのだろう。

「そうです。彼女を殺そうと思っていました」紗月は再び同じ言葉を繰り返し、決然とした顔つきを崩さなかった。

その表情には、誰にも弁護される必要はないという強い意志が感じられた。法廷内には不穏な空気が流れ、森田は額の汗を拭いながら、ただ紗月を惜しむだけだった。

審理が終わり、紗月は連行された。

傍聴席に座っていた涼介と温香の前を通り過ぎる時、彼女は一瞬立ち止まった。

彼女の背筋はまっすぐに伸び、その気高い態度は揺るぎないものだった。

目は二人の首にかけられた紅玉のペンダントに向けられ、そして、彼女は深く冷ややかな微笑を浮かべた。

「どうか、お幸せに」

そう言って、彼女は背を向け、その姿は法廷の扉の向こうへと消えていった。

涼介
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status