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第0029話

紗月は、にやりと笑いながら陸を見つめた。

「私のいた刑務所は女子だけよ、どうやって恋愛するの?」

陸は、先ほどからかい半分に紗月をからかって、彼女がこの一年間過ごしていた場所を忘れた。

ハンドルを握り締め、後悔の表情を浮かべた。

少し間を置いてから、彼は口を開いた。「で、これからどうするつもりなんだ?」

紗月はスマホをいじりながら、ようやく真剣な表情を見せた。「正直、まだ何も決めてないわ」

彼女は家族を失いった。

出所後にどこに行くか、何をするか、何も考えられなかった。

彼女は大きくため息をつき、車内に静寂が漂った。

しばらくして、陸が提案した。「数日後にレーシングの練習試合があるんだ。時間があれば、見に来るか?」

「興味ないわ」紗月は冷たく返事をしながら、「しばらく運転してないし、腕が鈍ってる」と言った。

陸は彼女の言葉に同意するように頷いた。「そうか、確かに最近は車に乗ってなかったもんな。それじゃ、優勝賞金は俺のものだな。二千万円くらいだから大したことないけど......」

「腕が鈍ったなら、練習すればいいじゃない!」

紗月は突然姿勢を正し、目を輝かせた。

以前、借金の取り立てが毎日のように続いていたが、出所してからというもの、不思議と一度も催促の電話が来なかった。

彼女にはお金が必要だった。

復讐を果たすためには、お金がなければ何も始まらない。

陸は彼女のその決意に満足そうに微笑んだ。「その意気だ、紗月。君がいれば大丈夫だ!」

彼は紗月の、この決して諦めない強い意志が大好きだった。

中川グループ。

涼介が冷たい表情を浮かべ、周囲に冷気を漂わせていた。彼の隣にいる神田も、あまり近づけずにいた。

「調査はどうなっている?」

涼介は低い声で尋ねながら、手の中でそのペンダントを握り締めていた。

ここ一年、何度も刑務所を訪れたが、紗月に会うことは一度も許されなかった。

今日の出来事で、彼女が自分を拒む理由がようやく分かった気がした。彼女が、自分が人違いをしていることに気づいたからだ。

この思いが彼の心を苛立たせた。

今日の結婚式での紗月の姿が、頭の中を離れない。

神田は一歩前に出て、頭を下げながら報告した。「まだ調査中ですが、時間がかかりそうです」

涼介は一瞬動きを止め、心形のペンダントをデスクに置いた。

10歳
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