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第0020話

「彼女の借金を全部肩代わりするように言ったはずだろう?どうして、まだあんな場所に居続けるつもりなのか?」

「いえ、それがですね、我々の者が彼女に伝えようと会所に行ったところ、ちょうど警察が彼女を連れていくところだったんです......」

涼介の目が一瞬で冷たくなり、その場の空気が張り詰めた。

「何と言った?」

秘書は冷や汗をかき、もう隠すことができず、すべてを正直に話した。

「藤崎さんが今、病院で手術を受けています。藤崎家もすでに弁護士に連絡し、故意殺人で訴える準備をしています......」

涼介は背筋をピンと伸ばし、その瞳には誰にも読み取れない感情が浮かんでいた。

警察署。

紗月がパトカーから降ろされるとき、彼女の心は冷え切っており、何も言わずに拘置所の冷たい壁にもたれていた。

耳元では、誰かが不満そうに話している声が聞こえてきた。

「なんてついてないんだ。真夜中にこんな目に遭うなんて」

「そうだよな。金持ちを殺そうなんて、正気じゃない」

......

「よし、そろそろ取り調べが始まる。未遂か既遂かはまだ分からない。でも、上からの圧力がかかっているさ。この件は厳しく扱うぞ、全員気を引き締めろ!」

間もなくして、鉄の扉が開かれた。

「出ろ、取り調べだ」

紗月は小さな取調室に連れて行かれ、眩しい光が一瞬で彼女の顔に当てられた。

その向こうは真っ暗で、彼女の正面にあるのは黒い一方通行のガラスだった。

ガラスの向こうには無表情の女性警官が座り、ペンを手に持っていた。

ドラマでしか見たことのないシーンが、今、彼女の身に現実として起きている。

「名前、年齢......」警官はマイクを通して質問を始めた。

紗月は一つ一つ答えた。

藤崎家が故意殺人で訴えていることを知ったとき、紗月は冷笑を浮かべた。やはり温香が仕掛けた罠だったのだ。

「殺していない。正当防衛だ。監視カメラを見ればすぐに分かるはずだ」

温香が先に手を出し、わざと投げた酒瓶に当たっただけなのだ。

監視映像を確認すれば、誰でも真実が分かるはずだ。

しかし、女性警官は何も聞いていないかのように、淡々と記録を続けていた。

ついに紗月は耐えられなくなり、「バン!」とテーブルに手を置いた。

「聞こえてるの?人を殺していない!」

紗月は感情を抑えられなくなり、叫んだ。まだ
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