病院を出た車に乗っていても、先悦子に聞かされたことが頭の中で響いていた。なんでだろう?椿には、返答することができなかった。多分、彼はただ女の態度が新鮮で気になったから、とことんまで調べて明白にしたかったのだ。それだけのかも知れなかった。急に鳴ったスマホの着信音は、椿を我に戻せた。気を揉んでいた彼は、眉間をもみほぐして、電話に出た。「で?」「宇野様、この五年間の宇野様の行程記録を調べましたが、Dr.霧島の行程と重ねた記録は一つもございませんでした」「一つだけ気になる点がございまして、Dr.霧島は二年前一時引退していました。彼女がこの二年間どこに行ったかは誰も知らなかったから、この二年間の行程を調べるのは骨が折れます」「折木様に知れべてもらうのはいかがでしょうか、宇野様?」折木遊馬は裏世界の王とも言われた人物で、表社会で調べようのなかったものについて、あの人なら何かできるかと思って、海斗はそう提案した。気が遠くなるような沈黙が続いて、海斗は椿がきっと頷いてくれると思っていたところに、彼はこの提案を却下した。「その必要はない。たかが医者一人に、そんなのは資源の無駄使いだ。過度に関心することはない」ここでやめるなんて、海斗はいぶかった。海斗が口をきいて、調べるのをここで打ち消しにすることでよろしかと確かめるのにも間に合えなくて、電話はもう切られた。海斗はいくら気が詰まっていても、余計な口を出してはいけないことくらい分かっていた。数日後、関谷悦子は無事退院できた。奈央が直々に退院手続に手伝ってあげた。「病相は綺麗に摘出してもらいなしたが、再発するも十分にありますので、定期定期に再診を受けること。普段の日常生活のほうは羽をねばし過ぎないように健康的に過ごしてください」病院の前で、奈央はもう一度念を押した。「かしこまります」悦子は頷いて返事をした。「ありがとうございます、Dr.霧島」「帰りはどうしますの?タクシーを拾いますか」迎えが来てなかったので、奈央は少し意外だった。もう何日も椿を見ていなかった。奈央はてっきり椿が悦子を迎えに来ると踏んでいたが、まさか来なかったなんて。向こうが悦子のことを大事に思っているかなんてもないと思っているか、奈央は疑問に思った。言ったそば、悦子は近くに走ってき
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