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第14章 来るもの逆らえず

来た!もう来てしまった!

リビングのドアの外から聞こえてきた足音は、だんだん近つけてきて、一歩一歩が奈央の神経を踏んでいたかのようだった。もし穴があったら、入りたい気分だった。

彼女は精一杯を尽くして、自分を落ち着かせた。再び顔をあげた頃には、彼女にはもう椿とあう心構えができていた。

けど、視野に入ったの渡辺さんのたっだ一人だった。

椿はどうした?

どうしてきていなかったの?後ろにいたか。

奈央は首を伸ばして渡辺さんの背後を見たが、誰もいない状態だった。

「あの青二才は?」

渡辺さんが一人で戻ってきたのを見て、宇野大旦那様の顔色が暗くなり、嫌な予感しかしなかった。

「坊ちゃまは用事ができまして、また今度でお伺いしますとおっしゃいました」

渡辺さんにとっても仕方がなかった。椿は言ったそばもう屋敷をでたし、止めようがなかった。

「急用じゃと?」

大旦那様は眉を顰めて、冷たい目つきで渡辺さんを見た。

どうしようもなくなって、渡辺さんを真実を話した。

「関谷様に何かあったらしくて、坊ちゃまは電話を出た後急いで向かわれました」

なるほど、関谷悦子に何があったからか。

奈央はここの中でにやついた。やはり、椿にとっての関谷悦子は何よりも大切なもので、いつになっても変わらなかっただろう。たとえ大旦那様であろうと、関谷悦子ときたら、後回しにされても仕方がなかった。

そこまであの女が好きだったら、あの時はどうして自分との結婚に頷いたか。とこどんまで、大旦那様に抵抗すればよかったものの。

「椿の小童!」

大旦那様は手に取っていた杖で力強く地面を叩いた。ご立腹だったのは見え見えだった。

「一体あの関谷ちゅう女に何を吹き込まれたじゃのう!」

お怒りの極まりで、また何かを言おうとしていたが、ふと奈央がまだここにいたのを思い、老人は黙った。

暫くして、老人は奈央のほうを振り向いて、面はゆいな表情で言った。

「椿の奴め、一時あの狐女に騙されているだけじゃ。我に戻ったら、あいつもきっと奈央が良い女だって気付くはずじゃ」

「もういいのです、お祖父様。もう離婚しましたから」

かど、大旦那様も頑固者で、意地で奈央に言った。

「いや、お前こそが最も相応しい妻じゃ、あいつには必ず思い直させる」

奈央は八の字を寄せて、訳がわからなくなってきた。

「お祖父様は......どうしてそう思いましたか」

彼女には分からなかった。自分と椿はあったこともなかったのに、大旦那様にお目にかかった以来、この老人は自分の味方で、孫と喧嘩になっても、ずっと自分のことを庇ってきた。

奈央は自分にこれほどの魅力があったとは思わなかったので、理由もなくこの老人に庇ってもらっていたことを奇妙に感じた。

大旦那様はほんの一瞬固まっていたが、すぐ我に戻った。

「初めて奈央にあってから、お前は椿と相性がいいと思った。若いものの言う直感ってやつじゃ」

直感?

奈央は暫く老人の顔を見つめていたが、この老人はいかにもそんなことだという顔つきで、彼女は何の異様も感じなかった。

けど、彼女なりにも彼女の直感があった。このことはそう簡単ではなかったと。

けど今日の彼女は相談があってきたので、とて問い詰めたタイミングじゃなかった。彼女はニコニコと笑って、話題を変えた。

「お祖父様、実はお祖父様に相談があってきました」

椿が江野沢家についた時には、悦子の両親は娘の部屋で看病をしていた。椿が来たのに気づいて、二人はすぐ部屋を出て、二人きりにしてあげた。

「具合悪いっておばさんが電話で。どこが悪い?なぜ病院に行かない?」

椿の問いに何の温度もなかった。

「大丈夫だ、お母さんが心配しすぎただけ」

悦子は照れくさそうに話を続けた。

「わざわざ椿さんにきていただて、私が貧弱だからいけないの」

「ちゃんとお前の世話をするってお前の兄さんと約束したから、遠慮しなくていい」

椿は悦子を見つめていた。

「本当に大丈夫だよね?病院に行かなくてもいい?」

「大丈夫よ、自分の具合はちゃんと分かっているつもりよ」

悦子は自分の心の中にあったやましさを振り払うために頭を振った。

「だったら俺はもう帰る。今晩はお爺さんと晩御飯を食べる約束だ。待たせてはいけない」

そう言って、椿は出ようとした。

「椿さん!」

咄嗟に彼を呼んで引き止めた悦子の目は赤くなった。

「お兄さんとの約束じゃなかったら、あたしには目もくれなかったでしょう?」

椿は沈黙に陥り、彼女を見て暫くしてから言った。

「今は病気を直すのは先だ。変なことを考えるな」

「椿さん、あたし......」

「いいから、俺はもう帰る。ちゃんと休むこと」

話が終わったら、椿ももう部屋を出た。

一階にいた悦子の両親は、椿が早く出てきたのを見て、急に不安になった。

「椿さん、もう帰るの?もっと悦子のそばにいてあげなよ。えっちゃんはずっと椿さんのことを口にしていたのよ」

椿は冷徹にあの二人を見た。その目つきは矢のようで、二人の心臓を射抜いて、容易にあの二人の下心を見抜いた。

「ちゃんと悦子の世話をしてやれ。彼女に何があったら、関谷家を潰す。分かったか」

椿の声は冷たかった。

「もちろん。えっちゃんは私たちの娘だし、ちゃんと世話を焼くのに決まってる」

悦子の父はぴょこぴょこした。椿の目の前では、この男は大人しくするしかなかった。

椿は彼のその言葉でにやつき出した。

「娘だと?悦子はお前の娘か?うまく隠しているつもりか」

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