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第20章 元妻さんの行方を掴めなかったのです

お兄の和紀からの電話をもらったのは、翔の車に乗っていた時だった。

「宇野グループの連携相手は関谷家に変わった」

「関谷家?」

彼女は少々驚いた。これは彼女の考えていた関谷家なのか?

「うん、宇野家とは親しいらしくて。この泉ヶ原では、誰もが宇野家が陰で関谷家を支えていることを知ってる。ここ年にいい好調なのも、そのためだ」

ペラペラ喋ったあと、和紀は自分が疑問に思っていたことを聞いた。

「これを調べさせてどうする?宇野椿のやろうに何かされたか」

「ううん、ただ桐嶋家を切り捨てた理由が気になっただけ」

奈央はそう答えた。

「ならいい、もしあいつが何かをするのなら、お兄に言ってくれ。ぶん殴ってやるから」

奈央の失った二年間のことで、彼は未だに怒ったいた。

和紀の言葉で、奈央は微笑んだ。

「うん、分かった」と答えた。

電話を切った奈央を車の外をガラス越しで見ていた。思えば自分は幸せもだと感心した。

両親がいなかったが、お爺さんに入念に育てられただけではなく、自分を可愛がってくれる兄さんが二人いて、彼女は今の生活で満足していた。

「関谷家っていうの、さっき宇野椿の隣にいたあの女の実家だろう?」

助手席にいた奈央を見ながら、翔はそう言った。

奈央は頷いた。

「そうだと思う」

関谷悦子の実家以外、他に該当する関谷家はいなかった。

「これだと、宇野椿はずっと前から桐嶋家を切り捨てることを考えたいたかも。奈央さんのことはたまたまだった、関係していたとは思わない」

陰で椿の悪口を言わなくても、いずれは切り捨てられる運命だった。

頷いた奈央の顔色は少し暗かった。

「ちゃんと謝れば挽回できると思った自分がバカだった」

今思えば、笑えた話だった。

彼女の機嫌が悪かったのを見て、翔ももう椿のことを口にすることをやめて、話題を変えた。

「明日の夜、慈善宴会があるけど、時間ある?」

「一緒に行って欲しいの、翔兄?」

奈央は聞き返した。

「そうだが、女伴がなくて困ってる」

というのは翔の答えだった。

口を遮って笑った奈央はこう言った。

「いいけど、翔兄もいい加減恋人を作らないと、私だって毎回行ってあげられないの」

「分かった、そうするよ」

翔は口車を走らせたが、彼の目線は奈央の顔に止まった。

椿は悦子を家まで送った後、また会社に戻って、仕事に励んでいた。

けど、書類を前にして、頭の中に浮かんできたのは奈央だった。

彼女の話し声が彼の頭の中響いていて、思えば思うほど、あの日宇野邸で聞いた声と重なってきた。

海斗はちょうどこの時ドアをノックして入ってきた。

「宇野様」

「なんの話だ?」

心の中の疑惑を一時抑えて海斗に聞いた。

「この前、元妻を探し出して、町の西にある屋敷をあげる件ですが......」

海斗は躊躇った。なかなか言える勇気がなかった。

顔を上げた椿は、些か怒っていた。

「がって何?彼女は気に入らないか」

「いいえ、違います。元妻さんの行方を掴めなかったのです」

海斗は頭を低く下げて、ボスと視線が会うことを避けた。

「掴めなかった?」

八の字を寄せた椿は、かなり不満だった。

「海斗くんよ、最近のお前の執行力に不信感を思っている」

Dr.霧島はともかく、田舎から来た女の行方まで掴めなかったとは、この助手は使えないものだった。

海斗はひたすら頭を縦に振った。生汗をかいた彼は、自分の能力不足を認めた。

「私めの力不足です。どんな罰でも受けます」

椿の目には険しさしかなかった。

「引き続き調べろ!田舎者の女は蒸発したとは思わない」

Dr.霧島の詳しい情報を手入れなかったことで、椿はもう不満だったが、相手はそこそこの有名だと考えて、彼はなんとなく納得したが、その元妻に限って......

「御意、必ず見つけ差し上げます」

海斗は頷きを連発した。

少々気を緩んで、海斗は再び言った。

「明日の慈善晩宴ですが、参加しますか」

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