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第25話 バカにしないで

「周防翁の絵だって?」

「ありえない!」

誰かが鋭く声を上げた。

「周防翁はもう自分の絵をオークションに出すことはないと誰かしている事実。この絵が周防翁の作品であるはずがない」

「そうだ!偽物の絵をオークションに出すなんて、バカにしているのか?」

今日のオークションに参加しているのは、全員が泉ヶ原で名のある人物だ。彼らの怒りを、BQ雑誌が耐えられるはずがなかった。

川北編集長は冷や汗をかきながら、急いで言った。

「この周防翁の絵は匿名の方から提供されたもので、その方は真作であると保証しています」

「彼が真作だと言えば、それが真作になるのか?信じられない」

誰かがすぐに反論し、続けて言った。

「その匿名の人物とは誰だ?証拠を出して、この絵が本物であることを証明しろ」

今夜のオークション品は全て、イベントに参加した者たちが提供したものなので、いわゆる匿名の人物もこの場にいるはずだった。

周防翁の名前を騙って偽物をオークションにかけるなんて、一体誰がこんな恥知らずなことをするのか。

翔は眉をひそめ、不快感を露わにした。まさか自分の妹が提供した絵が偽物だと言われるとは。

彼が立ち上がろうとしたその瞬間、隣の奈央が先に口を開いた。

「その絵は私が提供したものです」

少し冷ややかな声が全員の耳に届き、みんな彼女の方を見た。

彼女か!

翔の妹であり、そして椿を怒らせた女性でもある。

「この絵は確かに周防翁の作品であり、皆さんが言うような偽物ではありません」

彼女は淡々と話し、その目には少しの動揺も見られなかった。

「何か証拠があるのか?周防翁が過去にオークションに出品したすべての絵には明確な所在がある。だが、この絵は......」

その人物は少し考え込み、続けて言った。

「この絵はこれまでに一度も出ていないが、新作だとでも言うのか?」

「その通りです」

奈央はうなずきながら、心の中でこの人が師匠の作品に詳しいことに感心した。一目でこの絵が未発表の新作であることを見抜いた。

彼女が否定するどころか、直接に認めたことで、この場にいる全員が彼女をバカを見るような目で見た。

「周防翁はすでに新しい作品をオークションに出すことはないと宣言している。彼の名前を騙る前に、せめて少しは調べてからにすべきだっただろう。今のように笑いものになるこ
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