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第31話 宇野さん、まず自分の事をちゃんとしなさい

「???」

奈央は、椿が自分に話しかけていることを確認したが、彼のこの口調と少し問い詰めるような言い方は、一体何を意味しているのだろう?

「答えて、僕以外の男なら受け入れるのか?」と、彼が再び口を開いた。

冷たい声色には、いくらか怒りの気配さえ漂っていた。

奈央は堪えきれずに笑いを漏らし、興味津々に椿を見つめた。

「宇野さん、私を責めているんですか?どの立場で?」

椿は無言だった。

「宇野さんは、常に上に立つ者として他人を指示することに慣れているので、誰に対しても命令口調になっているのではありませんか?

「残念ながら、私はあなたの部下でもなければ、あなたの質問に答える義務もありません」

そう言って、エレベーターが目的の階に到着した。奈央は先に一歩踏み出し、椿と一緒にいたくない気持ちを明確にした。

しかし、彼は諦める気はなさそうで、すぐに後を追ってエレベーターに乗り込んできた。

エレベーター内で、奈央と椿は距離を保ち、どちらも言葉を発さなかった。その場の空気は特に重く感じられた。

奈央が、この沈黙がそれぞれの目的地に到着するまで続くと考えたその時、椿が口を開いた。

「さっきは言い方が悪かった。悪かった。でも、君のことが心配なんだ。

「戦場ヶ原という男はただ者ではない。彼が君に近づくのも良からぬ意図がある。だから、あまり彼と近づきすぎないようにしてほしい」

奈央は彼を一瞥し、視線を戻した。

「彼がどういう人間かには興味がないし、彼がなぜ私に近づくのかもどうでもいい。私と彼はそれほど親しいわけじゃない」

椿が何か言おうとする前に、奈央は続けて言った。

「それに、誰と接するかは私の自由です、宇野さんには関係ない」

そのシンプルな言葉で、椿は激怒した。

「冗談で言っているんじゃない」

彼は真剣に言い、表情も厳しかった。しかし、奈央はまったく気にかける様子を見せなかった。

「まず自分の事をちゃんとしなさい」

彼女は鼻で笑うように言った。

「Dr.霧島!僕は......」

「カチッ」という音がして、灯りが消えた。周囲は瞬時に闇に包まれ、その直後、エレベーターも停止した。

「運が悪すぎ......」

奈央は心の中で呟き、エレベーターのボタンを何度か押してみたが、反応はなかった。

彼女はスマホを取り出し、懐中電灯を点け、その微か
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