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第35話 調べている連中がいる

次の日、泉ヶ原市立病院で奈央は手術を終えたばかりのところに、和紀から電話がかかってきた。

「お前の個人情報を調べている連中がいる。相手はかなりの手練れで、お前が国内にいた情報はすぐにバレるかもしれない」

彼は言った。

奈央はそれを聞いて驚いたが、すぐに平常心を取り戻した。

「大丈夫だよ、お兄。調べられたところで、私には隠すようなことは何もないし」

「うむ。椿に正体を知られたくないと思ったが」

和紀は冗談交じりに言った。

奈央は笑って、特に気にする様子もなく答えた。

「知られてもいいし、知られなくてもいい。別に自分から言うつもりもないし」

和紀の言葉からして、彼女を調べているのが椿である可能性が高いと奈央は推測した。

「最近忙しいのか?毎日手術があるみたいだな」

和紀が尋ねた。彼は最近国内にいないため、奈央に会いに行くことができなかった。

「忙しい方がいいよ。余計なことを考えずに済むから」

彼女は答えた。

二人はさらに少し話をして電話を切った。奈央が再び仕事に戻ろうとしたところ、突然オフィスのドアがノックされた。

すぐに誰かが入ってきたが、奈央はその人物を見て驚いた。

「戦場ヶ原さん?」

「堯之と呼んでくれればいい」

彼は言いながら、すでに奈央の前に立っていた。

奈央は真剣な表情で、余計なことは言わずに尋ねた。

「何か用事ですか?」

「まあね」

堯之はうなずき、奈央の真剣な視線に何故か少し気まずさを感じた。

「昼食を一緒にどうかと思いまして」

彼が言うと、奈央は眉をひそめた。

「申し訳ありませんが、昼には会議があるので、ご一緒できそうにありません」

「そうですか」

堯之は失望した様子で、

「昼食をとらずに働き続けるなんて、大変ですね」

奈央は何も言わなかった。彼女はそれを苦だとは思っていなかった。

「いっそのこと、俺のアシスタントになってくれます?今の病院で稼いでいる以上の給料を保証できますよ」

昨夜のパーティーが終わった後、彼は奈央のことを調べ、彼女が周防翁の最後の弟子であり、著名な脳外科医でもあることを知った。

彼は驚いたが、同時にこの女性に対する興味がさらに湧いてきた。

彼の言葉を聞いても、奈央の顔には喜びの色はなく、逆に真剣な表情で言った。

「結構です。私は今の仕事が結構好きですから」

「そ
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