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第34話 もういい

「言って」

椿は驚いたように言った。誰かが彼にアドバイスをするなんて、とても新鮮だった。

「宇野さんは単なる暗闇恐怖症じゃないと思う。心理的な原因があるかもしれない。時間があるなら、一度心理医に診てもらったほうがいいよ」

彼女は言った。心理的問題は人によるものだ。特に椿のように長年にわたり大きなプレッシャーを抱えている人にとっては、問題を心に抱えたままにしてると、どんどん悪化する可能性がある。

彼女は本当に彼のことを心配して言ったのだが、椿はその言葉を聞いた瞬間、顔が黒くなった。

奈央は彼の顔色がますます暗くなっていくのを見て、周囲から放たれる寒気が人を震えさせるほどだったため、少し困った様子で続けた。

「宇野さん、心理問題はただの病気。そんなに拒絶する必要はないよ」

「もういい!」

椿は怒鳴り、奈央をまるで仇のように見つめた。

「僕に問題があるかどうかは、Dr.霧島に心配してもらう必要はない」

そう言うと、彼は踵を返して部屋に入り、ドアを勢いよく閉めた。

「この人......」

奈央は呆れ、少し怒りを感じた。

家に戻ると、彼女は自分のためにインスタントラーメンを作ったが、心の中ではまだイライラしていた。

好意が仇となるとはこういうことか!

心の中で罵っていると、突然ドアベルが鳴った。奈央は驚きながらも、ドアを開けに行った。

「道上さん?」

彼女はさらに驚いた。

「人違いのでは?」

結局、彼女と椿は向かいの部屋に住んでいるので、道上さんがドアを間違えることもあり得る。

しかし、海斗は首を横に振り、手に持っていたものを彼女に差し出した。

「Dr.霧島、これは宇野さんが命じて買ってきたお粥です。熱いうちにお召し上がりください」

奈央は目を見開き、少し口ごもりながら言った。

「宇......宇野さんからの?」

「はい」

海斗はうなずいた。

奈央はぼんやりと受け取り、椿が彼女がインスタントラーメンを持っているのを見て、海斗に買わせたのだろうと思った。

しかし......

あの男がいつそんなに親切になったんだろう?

「何もなければ、これで失礼します。おやすみなさい」

物を届け終わると、海斗は立ち去ろうとした。

「道上さん」

奈央は彼を呼び止め、少し躊躇した後、言った。

「宇野さんが暗闇を恐れていること、知ってい
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