第28話 友達になりませんか？

オークションが終わり、その後は退屈な交流会が始まった。人々が奈央に興味を示していた。

彼女が大賀翔の妹であり、さらに周防翁の最後の弟子であることを考えれば、彼女と親しくなれれば、出世の道が開けると考えるのは当然のことだった。

奈央は彼らの思惑を知ることもなく、内心少し不機嫌だった。椿が彼女の絵を落札したことを知り、ますます気が進まなくなった。慈善活動のためのオークションだから、誰に売れても同じだが、それが椿だと知ると、どうしても腑に落ちない。

あの男、本当に絵の価値が分かっているのか？ また、絵を買って悦子に贈るつもりじゃないだろうな？

一瞬、彼女は今日この絵を寄付したことを後悔した。もっと違うものを出品すればよかったと思った。

彼女はワイングラスを手に取り、隅っこに身を寄せ、遠くで人々と巧みに話している翔を眺め、微笑みを浮かべた。翔兄はどんどん成功者らしくなっている。

彼女がそう思っていると、突然誰かが彼女の前にやって来た。

「こんにちは。私は伊野栄介と申します。私と友達になりませんか？」

奈央は顔を上げ、来た相手をちらっと見た。やや眉をひそめた。彼はやや太っていて、油っぽい感じがする。特にその目、じっと彼女を見つめているのが非常に不快だった。

彼女は立ち上がり、きっぱりと言った。

「ごめんなさい。友達を作るつもりはありません」

そう言って、彼女はその場を離れようとした。しかし、栄介は引き下がるつもりはなかった。彼はすぐに奈央の前に立ちはだかった。

「大賀さん、泉ヶ原は広いですから、翔がいつもあなたを守れるとは限りません。言葉には気をつけた方がいいですよ」

そう言う間に、奈央は周りに数人の男が彼女を囲んでいることに気づいた。どうやらこの男は最初から準備をしていたらしい。

奈央は手に持っていたワイングラスを置き、会場を見回したが、翔の姿は見当たらなかった。おそらく相手に言い訳をされて、その場を離れたのだろう。

彼女は翔の安全については心配していなかった。彼の現在の地位では、簡単に手を出されることはないはずだ。

目を栄介に戻し、彼女は少しも慌てることなく、むしろ親切に言った。

「伊野さん、今日は手を出したくないので。手を引かせてくれます？言う通りにしないと、私も手加減しませんよ」

せっかくの慈善イベントなので、壊したくはなかった。だ