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第19章 誰がお前の友達か

三人とも椿に視線を向けた。奈央は心の中で男がその提案を却下することを祈った。彼女は心底から、椿と食卓を囲むことを嫌がっていた。

気に障るからだった。

「悦子が決めて大丈夫だから」

口を開いた男の返事は奈央の期待を裏切った。

奈央は完全に呆れた。

「Dr.霧島、椿はいいって、Dr.霧島は?」

悦子は笑いながら、期待に満ちた顔で奈央を見ていた。

奈央の内心は、嫌がりの塊だった。彼女は翔を見た。

「翔兄、どう思う?」

彼女は翔になんかも目線で暗示したのに、翔も彼女の期待を裏切った。

「異議なし」

異議なし?

翔兄、何してくれた?

悦子は奈央のそばに座った。椿は翔の隣の席について、ちょうど奈央の向かいだった。奈央が顔をあげると、ちょうど彼の顔が視野に入ってきた。このことが実に不愉快だった。

「Dr.霧島、この方は彼氏さんですか。見てすぐ優秀な方だとわかります。通りで私からの紹介は不要でした」

反対側に座っていた殿様みたいな翔を見て、悦子はやや負けた気がした。

椿は軽く笑って言った。

「大賀社長、この泉ヶ原の新しくきた貴公子。当然優秀なはずだ」

「宇野さんは買い被りすぎよ。宇野さんに比べられてら、まだまだ励んでいなと」

翔もその話に笑って、なかったことにした。

椿はこの話を本気にして、顔色が暗くなった。この話の意味は、向こうは自分をライバル視した?

椿は心の中で嘲り笑った。宇野グループを抜けるなんて、百年早い話だった。

「そこまで優秀な方なら、Dr.霧島とはお似合いです」

口ではそう言っていたが、悦子の内心では嫉妬してしまった。

奈央はこの三人の話で呆れて、厳しい言葉を言った。

「私たちがどういう関係かは関谷さんとは関係ないと思うが、何しろ私と関谷さんとは他人なんで」

関谷の執刀医を勤めただけで、お互いの私生活について話し合えるほどの付き合いだと奈央は認識しなかった。

その上、悦子に対しては高感度ゼロだった。

向こう席の椿はなおさらだった。高感度ゼロだけでは止まらず、嫌悪そのものだった。

「ごめんなさいDr.霧島、余計なことに首を突っ込んでしまって」

悦子の目は一瞬で赤くなり、唇を間でいて、とんだ虐めをされたかのようだった。

「もうすっかり友達だと思っていましたが」

奈央はにやついて、誰がお前の友達かと思った。

「少しは言いすぎたじゃないか、Dr.霧島?悦子は聞いただけで、悪気はなかった」

口を開いた椿をじと奈央の目を見た。これで彼女を見通せるかと思っていたようだった。

呆れた奈央が椿に嫌味を刺そうとしてたところを、翔が代わりに何かを言った。

「宇野さんは離婚したときたが?」

今度は椿が眉を顰めて、不快を覚えた。

「大賀さんもこういう話に興味があるとは」

「怒らないでくれ、適当に聞いただけで、悪気はなかった」

椿の言葉をそのまま返した。

その食卓での雰囲気は、その瞬間で固まった。

笑いを我慢していた奈央は上機嫌だった。

お箸を下ろした奈央は、口を拭いていった。

「翔兄貴、もう行こうか。宇野さんと関谷さんにもゆっくりと食べさせてあげて」

「うん」

翔は頷いた。

二人は会話をかわしながら出ようとした。椿は何も言わずに、自分のその淡々とした視線を二人に向けた。

兄貴だったと?

つまり恋人同士ではなかった?

「Dr.霧島......」

悦子は声をかけて引き止めようとした。

けど、奈央はさよならの代わりに手を振って、翔と一緒にレストランを出た。

二人が行っても、食卓の雰囲気が全然柔らかくならなかった。悦子は自分の向こうで、’沈黙していた男を見た。彼は一体何を考えいたのかさっぱりわからなくて、悦子は心配していた。

「椿さん」

彼女は声をかけた。

「何を考えているの?」

椿は我に返ったが、その視線はカラス越しに、お顔で車に乗ろうとしていた奈央を追った。

彼は突然あの日に、宇野邸で聞いた声を思い出した。この前ただあの声が懐かしいと思っていたが、先まで奈央の話し声を聞いて、ふと気づいた。

似ていることを!

けど、それはありえない話だった!?

彼はこのことを理解できなかった。きっと何かを見落とした気がした。

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