智久との電話を切った紗月は、再びベッドに横たわり少し休んだ後、いつの間にか眠りに落ちていた。彼女は夢を見た。夢の中で、初めて涼介と出会った時のことが蘇った。あの日は春の午後で、暖かい日差しが降り注いでいた。紗月は桜の木の下でスケッチをしていたが、ふと、遠くの木陰で本を読んでいる白いシャツを着た少年が目に入った。その少年の顔立ちは深く、彫りの深い整った容姿が、冷たくも上品な存在に際立たせていた。彼は遠くの木の下で本を読み、時折眉をひそめ、時折伸びをしていた。その姿に魅了された紗月は、思わずスケッチに彼を描き入れてしまった。「なかなか上手だな」ようやく色を塗り始めたとき、紗月の耳は少年の低い声にとまった。驚いた彼女の手は震え、少年の顔を黒く塗りつぶしてしまった。紗月は焦り、どうするべきか迷っていると、その時、背後から少年の笑い声が聞こえてきた。「俺を醜く描いちゃったな」少年は紗月の手から鉛筆を取り、スケッチブックに番号を書き込むと、「これを修正して、連絡してくれ。この絵、買うよ」と言った。紗月が振り返って「名前は?」と尋ねた。彼は笑って「涼介でいいさ」とだけ答えた。「涼介......」紗月はその名前ををつぶやきながら、目を覚ました。外は既に暗く、月明かりが窓から淡く差し込んでいた。ぼんやりとした哀愁を漂わせていた。夢から覚めた彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。紗月は鼻をすすりながら涙を拭い取り、ベッドを降りようとした瞬間、突然「パチッ」と部屋の明かりが点いた。驚いた彼女が目を凝らすと、涼介がドアのそばの椅子に腰掛けていた。彼はのんびりと椅子にもたれかかり、長い脚を優雅に組み、角ばった顔は光に照らされ、より深く、より立体的になっていた。そして、冷たい視線を紗月に向けていた。「夢でも見たか?」彼の問いに、紗月はすぐに悲しみを押し隠した。何気なく顔を拭い、涙のしずくを拭った。「ええ、悪い夢でした」涼介は目を細め、冷笑を浮かべた。「俺が出てきたのか?」紗月は彼を軽く睨みつけ、ベッドから降りると「いいえ」「佐藤さんと私には何の関係もないから、夢に出てくるわけがないだろう」そう言って部屋を出ようとした。しかし、涼介が立ち上がり、長い腕で彼女を遮った。「出て
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