「おばあさま、本当に感謝しています!」理恵は興奮しながら箱を佐藤夫人に差し出した。「これ、山本氏が自らデザイン・製作したもので、今おばあさまがつけているネックレスと同じシリーズなんですよ......」「ご覧ください、とても美しいでしょう?」「ええ、本当に美しいわ」夫人はそのネックレスを手に取り、離れがたい様子だった。ふと、耳に昨日のあのメイドの言葉が浮かんできた。「首にかけているその偽物のネックレス、二千万円の価値はなさそうね?」夫人は少し眉をひそめ、気まずそうに理恵を見つめた。「理恵、このネックレス......偽物じゃないわよね?」山本氏は、ここ数年で海外で有名になったジュエリーデザイナーで、月先生と並ぶ有名デザイナーとして知られていた。最近、彼女の作品は市場から姿を消し、希少で、価値が上がっており、元は二千万円程度だったものが今では億円以上に高騰していた。夫人もそのニュースを見たことがあり、だからこそ紗月に二千万円の小切手を渡す気になったのだ。しかし、紗月が昨日言ったことが彼女の心に引っかかり、まるで砂粒が目に入ったかのように思い返すたびに不快だった。このネックレス......まさか本当に偽物なのでは?理恵がこんなに高価なものを、簡単に贈ることができるのだろうか?彼女は芸能界にいるとはいえ、そこまで裕福ではないはず。夫人の表情に気づいた理恵は、軽く咳払いし、笑顔で答えた。「おばあさま、何を言っているんですか。このネックレスが偽物なわけありません」「私は苦労してオークションで手に入れたんですわ」「それに」理恵はさらにお世辞を言い続けた。「おばあさまはこれまで数々の宝石を見てきた方ですわ。本物かどうか、すぐにおわかりになるでしょう?」「本物ですよ」「涼介をとても大切に思っているので、おばあさまには最高のものをお贈りしたいと思いましたわ」理恵の態度は誠実で、目も真剣そのものだった。夫人は少し眉をひそめたが、実際にこのネックレスが偽物だと言い切れる根拠もなかった。ただ、昨日の紗月の言葉が引っかかっているだけだった。理恵がこれまで送ってきたのは、さほど高価ではない贈り物ばかりだったが、今回のような高価なものを急に贈られると、疑いたくもなった。だが、もし本当に涼介を大切に思っているか
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