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第066話

「俺のベッドに入りたい、俺の女になりたいと望んでおきながら、親密になることを拒み、俺に薬を盛って、飲んだものさえ拒否するとはな」

涼介はそう言うと、冷ややかな視線を紗月に向けた。「お前、一体何がしたいんだ?」

その冷たい眼差しに耐えられず、紗月は彼と目を合わせることができなかった。軽く咳払いし、俯いたまま黙り込んでいた。

「お前の狙い通りなら、確かに俺に薬を盛るだろうが、下剤じゃないさ」

涼介の低く魅力的な声が耳に響いた。

紗月は心臓が少し締めつけられるのを感じ、唇を噛んで答えた。「私......」

「お前の本当の目的は俺じゃない」

涼介は目を閉じて、静かに結論を導き出した。

「言ってみろ」

彼の声は優しく、しかし厳かだった。「一体何が目的なんだ?」

ただ単に俺の妻を模倣しているだけか?

それともあかりが好きなだけか?

涼介にとって、それだけでは涼介のそばにいる理由としては足りなかった。

きっと他に何か原因があったに違いなかった。

紗月は唇を噛み締めた。

この男は、相変わらず理知的で怖いほど冷静だった。

彼女は頭を上げられず、ましてや口を開くこともできなかった。

一言でも話せば、涼介が彼女の正体や目的を見抜くのではないかと恐れた。

病室の空気は冷たく、重苦しかった。

紗月は涼介に睨まれ、俯いて沈黙していた。

二人はしばらくそのままの状態でいたが、やがて白石が「子供用ビタミン」のラベルが貼られたボトルを手に持ち、慌てて病室に飛び込んできた。

「佐藤さん、ナイトテーブルにはこのボトルしかありませんでした!」

白石は言いながら、紗月に対して非難の目を向けた。「本当に狡猾ですね!子供用ビタミンのボトルに下剤を入れて隠すなんて!」

「もしあかりがこれをビタミンだと思って飲んでいたら、大変なことになっていたかも......」

言葉が終わる前に、目の前の光景に白石は言葉を失った。

なぜなら、涼介がすでにそのビタミンの蓋を開け、中から二粒を取り出し、その場で噛んで食べていたのだ。

白石は驚きのあまり口が開いたまま、声も出なかった。

「佐藤さん......」

彼は困ったように涼介を見つめた。「先ほど手術を受けたばかりですよ、どうしてまた......」

しかし涼介は白石の言葉には耳を貸さず、さらに二粒を取り出し、口に放り込んだ。
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