共有

第068話

涼介は微笑んだ。「それはそうだな」

そう言って、彼は真剣な表情で紗月の顔を見つめた。「理恵に対して、お前が何をしようが構わないと思っているよ。

むしろ、お前たちの決着を見てみたいくらいだ」

紗月は一瞬固まった。

涼介が最低条件に理恵を含めなかったのは、こういうことだったのか。

理恵と競わせようとしている?

それは違うだろう。

涼介はただ、理恵に危機感を持たせたいだけだ。

結局のところ、以前も彼は理恵を喜ばせるために、お腹に子供三人がいる紗月を命の危機にさらしたのだから。

今回も理恵を満足させるために、紗月を苦しめるつもりだろう。

その考えに辿り着いた瞬間、紗月は吐き気を感じた。

彼女は微笑みを引っ込め、「理恵には適わないんだよ」と冷静に言った。

六年前も今も、彼女は理恵に敗れ続けていた。

「それはどうかな」

涼介は目を閉じ、眉間を軽く揉みながら言った。「もう遅いから。帰って。

あかりと一緒にゆっくり休め」

紗月は黙って頷き、すぐに病室を出ようとした。

涼介と一緒にいるのが辛くて、一刻も早く離れたかった。

ドアに手をかけたところで、彼の低い声が背後から響いた。「もうこんな時間だ。

あの少年も青湾別荘に連れて帰れ。明日、使用人が送り返すように手配して」

紗月は一瞬足を止め、「彼は佐藤さんに薬を飲ませ、病院送りにしたんだよ。

それでも、怒っていないのか?」

「そんなに怒ってはいないさ」

涼介は淡々と答えた。「本来なら、怒るべきなんだが......

この少年には怒れなかった。なんか彼とは馬が合う気がするから」

その言葉に、紗月の心が微かに揺れた。まるで心の一部が空っぽになったような感覚だ。「わかった」

そう言って、紗月は振り返ることなく部屋を出た。

病室のドアがもう一度閉まった。

涼介は小さくため息をつき、ベッドサイドに置かれたコップを手に取り、一口飲んだ。

温かい水が喉を通って、その時、彼は思い出した。さっき、紗月もこの水を飲んでいた。

骨ばった大きな手がカップを置いた。

これって......間接キスか?

キスといえば......

そう思った瞬間、彼の脳裏に別荘で紗月にキスしそうになった場面が浮かんだ。

彼は何が悪かったのかわからなかった。

桜井が離れた後、彼はどの女にも手を出さなかったのに。だが、今夜
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status