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第065話

紗月は実際には下剤を持っていなかった。

彼女はうつむきながら、「持っていないの」と答えた。

「白石」

涼介は冷たい声で、「青湾別荘に戻って、残っている下剤を持って来い」と命じた。

そう言いながら、彼は淡々と微笑み、その底知れない瞳で鋭く紗月を見つめた。「どこに置いたんだ?」

紗月は黙って唇をかみしめた。

なぜ突然、自分に下剤を飲ませたがっているのか理解できなかった。

彼女は眉をひそめ、「白石さんを帰らせるのは面倒だわ

今、ここは病院だから、先生に......」

「そうだ!」

白石も別荘に戻るのが面倒だったらしく、紗月の言葉を最後まで聞かずに話に割り込んだ。「今すぐ先生を呼びます!」

「彼女が持っているものを飲ませたいんだ」

涼介は白石に冷たく一瞥をくれ、声は氷のように冷たい。「わからないのか?」

白石は一瞬呆然とし、顔色が徐々に暗くなっていった。

涼介は紗月に目を向け、ため息をつきながら尋ねた。「薬はどこだ?」

紗月は目を閉じた。

実際、彼女は下剤を持っていなかった。

そこで、適当に場所を告げるしかなかった。

「私のベッドの横のナイトテーブルの一番下にあるわ」

そこには最近買ったビタミン剤が入っていた。本来はあかりに飲ませるつもりだったものだ。

しかし、今の状況では......

それを言うしかなかった。

「白石」

涼介は白石に淡々と視線を向けた。

「すぐに戻ります!」

白石は、まるで風のように病室を飛び出していった。

病室のドアが閉まり、部屋には紗月と涼介の二人だけが残った。

空気が重く、息苦しささえ感じていた。

紗月は喉が乾いて仕方がなかった。

「水を買ってくるわ。すぐに戻る」

「ここにあるぞ」

涼介は彼女を一瞥し、ベッドの横に置かれた湯気の立つ水を指さした。

紗月は乾いた唇を舐め、「やっぱり外で買ってきるわ......」

「どうした?」

彼は眉を上げ、「俺の水が嫌か?」

紗月は嫌だなんて言えるはずもなかった。

彼女はぎこちなく笑い、「その水を飲んだら、佐藤さんが気分を害するのではないかと......」

「気分を害しないよ」

その底知れない瞳は、まるで紗月の心を見透かすかのようにじっと見つめていた。「飲め」

紗月は何も言わなかった。

しばらく躊躇していたが、ようやく深く息を吸い込み、ベ
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