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第062話

涼介は自分がどうかしていると思った。

「おじさん、お話してくれるの?」

透也は目をパチパチさせ、まるで大人しく話を聞くような素振りを見せた。「耳をすませて聞くよ!」

涼介は苦笑しながら、白石に車を海を渡る橋の上で止めるよう指示した。

夜のこの橋にはほとんど人影がなく、車もほとんど通っていなかった。

車を降り、彼は静かに橋の上に立ち、下の穏やかな海面を見つめながら話し始めた。「ここは、かつて俺の妻が事故に遭った場所だ。

彼女は、俺の元を去り、事故に遭った。

俺が到着したときには、ただ荒れ果てた現場と壊れたガードレールしか残っていなかった。

彼女がどこへ行ったのか、見つけられなかった。

周りの人はみんな、彼女はもう亡くなったと言ったけど、俺は信じなかった。遺体が見つからない限り、まだ生きていると思っていた。

半月前、その推測が証明された。本当に生きていたんだ。

しかも、俺たちの娘まで産んでいた。

それが、お前が遊園地で助けた女の子だ」

透也は唇を噛みしめながら、涼介の隣に立ち、目の前にある無傷のガードレールを見つめた。「ここから落ちたの?」

「そうだ」

涼介は苦笑した。「そうは見えないだろう?

もう6年だな。

時間が多くのものを変えるし、多くのものを忘れさせるぞ」

涼介は深いため息をついた。

時間はとても長く経った。

その間に、多くの人は桜井紗月のことを忘れてしまった。彼女の両親でさえ、最近になって彼に、妹である理恵との結婚を急かし始めた。

まるで世界全体が彼女を忘れ去ったように見えた。しかし、彼女は無理やり、涼介の心の中に根深く住み続けていた。

ふと、涼介の心に再び桜井の顔が浮かんできた。

涼介は苛立ちを感じた。

まさか自分ですら、彼女を待つことができなくなってしまったのか?

6年間、他の女性と親しくなることなく耐え続けてきたはずだった。

しかし、その「紗月」という名の女性が......

彼に何度も規則を破らせたのだ。

透也は、ママが落ちた場所に立って、心の中にさまざまな感情が湧き起こっていた。

しばらくして透也は振り向き、真剣な表情で涼介の顔を見つめた。「おじさん、それでも彼女を愛してたの?」

その答えがどうしても知りたかった。

もし涼介が本当にママを愛していたのなら、なぜ理恵とあんなことをしていたのか。
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