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第68話

二人はしばらく抱き合った後、ようやく名残惜しそうにお互いを放した。

氷川颯真は手を上げて、さっき自分が乱した橋本美咲の髪を整え、心配そうに尋ねた。「奥さん、どこか具合が悪いところはないか?」

橋本美咲は答えた。「本当に大丈夫よ、心配しないで」

美咲は少し苛立ちを感じ始めた。まるで自分の彼氏は、彼氏じゃなくて、父親みたいな感じだった。

氷川颯真は橋本美咲の心中を知らず、彼女が大丈夫だと言うのを聞いてようやく安心した。そして、颯真は美咲の手を引いて、別荘の裏庭へ向かった。

美咲は茫然と氷川颯真を見つめた。「颯真、どこに連れて行くの?」

氷川颯真は振り返って、橋本美咲にウィンクして答えた。「教えないよ。何をするか当ててみて?」

橋本美咲は氷川颯真のウィンクに顔を赤らめ、心拍数が上がった。この男、どういうこと?

彼のウィンクは女の自分よりも魅力的だったとは。

「分からないわ。颯真の心の中なんて分かるわけないでしょう」橋本美咲は顔を赤らめて言った。

氷川颯真はそんな妻を見て、笑顔をさらに広げた。「奥さんは本当に可愛いな、何度からかっても飽きないわ」

「だから、何なの?」橋本美咲は興味津々だった。氷川颯真は謎めいた様子て首を振った。「見れば分かるよ。今日完成したばかりのものだから。

「突然思いついたんだけど、奥さんがそれを見る前に、目を閉じて、絶対に見ちゃだめだよ」

橋本美咲は氷川颯真をちらりと見たが、結局、素直に目を閉じた。心の中では期待が膨らんでいた。今度は何だろう?

まもなくして、氷川颯真は橋本美咲を別荘の裏庭に連れて行った。

「さあ、目を開けていいよ」氷川颯真の声が耳元で響いた瞬間、橋本美咲は待ちきれずに目を開けた。彼女は颯真が何を用意してくれたのか、とても気になっていた。

見た瞬間、美咲は息をのんだ。そこには、完成したばかりの庭園が広がっていた。バラ、月季花、百合、牡丹、チューリップ、ライラックなど、様々な花々が競い合って咲き誇っていた。

「わあ、綺麗!」

橋本美咲は感嘆の声を上げ、その目は星が輝くように、キラキラしていた。

美咲は振り向いて氷川颯真を見つめた。「この花園は私のために?」

氷川颯真は笑顔で頷いた。橋本美咲は興奮して花の中央へと駆け寄り、くるりと一回転した。すると、彼女の着ているスカートも美しい弧を描いた。

氷川
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