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第72話

「でも、シャワーは浴びないと」

橋本美咲は飛ぶようにバスルームに駆け込んだ。

橋本美咲はバスルームの鏡の前に立ち、自分の赤くなった顔を軽く叩いた。どうしてこんなにも考えなしに、氷川颯真の部屋で寝ることにしたの?

これでは、まるで自ら墓穴を掘るようなものじゃなかった。でも、もう言ってしまったから、今さら変えることもできなかった。

たとえ氷川颯真が何かしようとしても、橋本美咲はそれを止めることができるの?彼らは既に結婚していた。正真正銘の夫婦だったから。

心の準備をした橋本美咲は、服を脱ぎ、浴槽にお湯を張って、足を伸ばして入った。温かいお湯が彼女の神経を癒し、美咲は全身の疲れが消えていくのを感じた。

バスルームで最近の出来事を、一つ一つ思い出していると、橋本美咲は現実感がなくなりそうだった。最近起きたことは、あまりにも多かったから。

前の自分がどんなだったの?美咲は少しぼんやりして、思い出せないでいた…

今の頭の中には氷川颯真と、彼との思い出しかなかった。まるで、颯真に出会ってから、自分の人生がようやく再び動き出したようだった。

橋本美咲は目を閉じ、知らないうちに、浴槽の中で眠ってしまった。

氷川颯真は部屋の外で、ノートパソコンを使って、明日の業務に取り組んでいた。

時間は刻々と過ぎ、氷川颯真は少し不思議そうに顔を上げ、時計を見た。

「もうこんなに時間が経っているのに、美咲ちゃんはまだ出てこないのか?」

氷川颯真は心配そうに起き上がり、バスルームのドアの前に行って、そっとノックした。「美咲ちゃん、いるの?」

バスルームの中からは返事がなく、水の音すら聞こえなかった。この状況を見た氷川颯真は、美咲ちゃんが浴室で気を失ってしまったのではないかと、ますます心配になった。そう思い、橋本美咲が恥ずかしがるだろうと構わず、バスルームのドアを開けて中に入った。

バスルームで橋本美咲を見た瞬間、氷川颯真は苦笑いを浮かべた。「最近そんなに疲れているのか?こんなところで寝てしまうなんて」

颯真は仕方ない様子でため息をつくと、腰をかがめて、橋本美咲を水から抱き上げた。温かいお湯から離れて、寒くなった美咲は、軽く震えた。

氷川颯真はそれを見て、急いでタオルを取り、橋本美咲を包んだ。

颯真は橋本美咲を抱えてバスルームを出て、自分のベッドに寝かせ、掛け布団を引き
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