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第79話

橋本美咲は呆然とその場に立ち尽くした。確か自分は白菜を取り下げたよね。野菜なんて頼んでいなかったのに。

どうしてこの白菜は、また火鍋のスープに浮かんでいたのだろう?美咲は火鍋の中を呆然と見つめた。清湯側も辣湯側も、どちらのスープの上にも、目立つ緑の葉が浮かんでいた。

橋本美咲は口の中の白菜を飲み込み、長谷川千夏を見つめた。「千夏、テーブルの上のこの野菜は…」

長谷川千夏はゆっくりと野菜を橋本美咲のお椀に入れた。「私が店員に追加で頼んだんだ。美咲が肉しか頼まなくて、絶対に野菜を食べないことは分かっていたから」

橋本美咲は悲しそうな顔をしながら、白菜を口に入れた。「食べないことを知っているのに、どうして追加で頼むの?」

長谷川千夏は仕方ない様子で、ため息をついた。「好き嫌いは、体に良くないよ。辛い物を食べるときも注意して、辣湯側で煮た後は、清湯側で再度煮てから、食べなさい」

長谷川千夏の言葉を聞いて、橋本美咲は後ろめたくなった。自分が好き勝手に、食べてはいけないことを思い出したが、千夏はそれを知らなかった。

たまに食べるだけだから、千夏も怒らないだろう。

美咲は慎重に長谷川千夏をちらりと見た。

長谷川千夏は橋本美咲の視線を敏感に察知した。彼女たちは長い付き合いだったので、その小さな動きの意味をよく理解していた。

「美咲ちゃん、何か私に隠していることがあるの?」

橋本美咲の目は泳いだ。「い...いや、何もないよ?食べよう、食べよう」

そう言うと、自分の好きな肉を取って、長谷川千夏のお椀に入れた。

長谷川千夏は、ますますおかしいと感じた。自分の親友の性格を知らないはずがなかった。この異常な態度は、きっと何か理由があったに違いない。

千夏は箸を置き、その気迫が、段々と増していった!橋本美咲は心臓がドキッとした。まずい、まずい。千夏のその態度から、何かを見抜かれたと感じた。

美咲は唾を飲み込み、勇気を振り絞って、長谷川千夏を見た。「千夏、どうしたの?」

長谷川千夏は冷たい笑みを浮かべて、橋本美咲を見つめた。「橋本美咲、私たちはまだ親友だよね?」

終わった!

フルネームで呼んだ。

橋本美咲は絶望的な顔をした。「もちろん親友だよ」

「じゃあ、親友なら、隠し事はなしだよね?早く言いなさい!」

長谷川千夏の顔は、橋本美咲の目には、まるで悪鬼のよ
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