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第83話

氷川は美咲に腕時計を差し出しながら、「ねえ、今何時かわかる?」と尋ねた。

美咲は「七時三十分ね」と答えたが、すぐにこれは彼女への問い詰めだと気づいた。

美咲はすぐに笑顔を作り、氷川の肩に寄り添った。

「ごめんね、久しぶりに千夏と遊んでいたからだ」

「だから今日はうっかり忘れちゃったの。次は絶対に気を付ける」

また今回?氷川は彼女を見つめながら、彼女の約束がどれほど信頼できたものなのか、少しだけ疑わしい気持ちになった。彼女は誓ったのは二回だろう?

「どうしてこんなに頼りない気がするんだろう?」

氷川は我慢できず、自分の思いを口にした。

ミルクティーを飲みながら、千夏はため息をついた。氷川だけが、妻への愛情から美咲の言葉を信じた。

長年の親友として千夏は、美咲の甘い言葉がどれだけ人を惑わせたかはよく分かっていた。

彼女は人を慰めたのが上手だが、それをやったのは難しかった。

もちろん、千夏はこれを氷川に教えなかった。

氷川の心はまだ美咲に傾いていた。

「今回だけ!」と彼は怒

美咲が喜んで歓声を上げた。

「これで最後にするって言っても、またやるんでしょ」

千夏は心の中で呟いた。

「千夏さん、まず住むところまで送るか」と氷川は千夏に言った。

「どうせ私が早く帰って、あなたたちの二人きりの時間を邪魔しない方がいいと思っているか?」と千夏は怒りながら言った。

氷川は沈黙で了承を示した。

「送ってくれなくても大丈夫。私の彼氏が迎えに来るから、美咲、彼が来るまで待っててくれればいいの」

「はい、はい」と美咲はすぐに同意した。

美咲がもう答えた以上、他に方法がなく、彼女たちと一緒に待つことにした。

「君の彼氏はいつ来るの?」

待っていた間、氷川はだんだんと苛立った。

それを聞いた千夏は目を白黒させた。

彼女は「もうすぐだってば。そんなに急いでどうするの?」と答えた。

「そうですよ、颯真、少し待って。千夏の彼氏が電話してきた時間と颯真が電話してきた時間は同じくらいだから」

美咲も賛同したので、氷川も黙った。

氷川が困惑していた様子を見た千夏は彼の肩を軽く叩いた。

「彼は仕事が少し長引いてるけど、もうすぐ来るはずだから」

その時、ある男が笑顔で近づいてきた。「千ちゃん、迎えに来たよ」

氷川は美咲とデートの貴重な時間を妨げた男が
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