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第85話

美咲は立ち止まり、氷川に尋ねた。「どうして大丈夫だって言えるの?」

氷川は肩をすくめて答えた。「ただ分かるんだ。あいつは普通のサラリーマンじゃないから」

「普通のサラリーマンじゃないってこと?」

その一言を聞いた美咲はさらに心配になった。佐藤直樹はなぜ身分を隠していたのか?

氷川はため息をついた。「心配しないで、彼は悪い人ではない。名前を隠している理由は分からないけど、千夏への気持ちは本物だ」

美咲は徐々に安心になった。「「さっきの話、前後が噛み合ってなかったわよ。あなたの最後の言葉を聞かなかったら、佐藤が人さらいかと思っちゃうところだった」

「仕方ないだろう。あれはあいつのプライバシーだから、僕も勝手に言えないんだ。言えることはもう全部話したよ」

彼は少し不満を感じていた。隠していたのは佐藤直樹のに、なぜ自分が妻に文句を言われたのか。やはり、親友と妻の仲が良すぎて、自分も巻き込まれたものだった。

安心になった美咲は氷川を引っ張って家に帰ろうとした。

「映画、観ないの?」と氷川は少し残念そうに言った。

「家に帰りましょう。どうせ家にはプライベートシアターもある」

「確かにそうだね」と氷川は同意したが、映画館の雰囲気と家の雰囲気は違ったと思っていた。

彼の気持ちを察した美咲、少し不機嫌そうに言った。「一体どっちが乙女なの?時々あなたの乙女心の方が私より強い」

氷川は少し照れくさそうに頭を掻いた。「それは、美咲と一緒にいると、もっと記念に残ることをしたくなるからだ。

「全部美咲のせいだ」

「はい、はい。全部私のせいだ」

以前は口数が少なく、決して自分の決定を曲げなかった強い意志を持っていたあの社長は、一体どこに行ってしまったのだろうか?最近の彼はまるで別人のようだった。

どうしてこんなになったのか?

二人は家に戻り、灯りをつけて、プライベートシアターに向かった。

しかし、美咲は突然足を止めた。

「颯真、ちょっと待っててね、すぐ戻る」

そう言って美咲は台所に向かった。氷川は何が起こっていたのか分からなかったが、その場で待つことにした。

別荘には二人しかいなかったので、どんな音もはっきりと聞こえた。

やがて台所から電子レンジの動作音と、軽い爆発音が聞こえてきた。

彼は一瞬緊張になった。美咲は一体何をしていたんだ?どうして爆発音
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