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第197話

「須山なんてただの普通の大学生ですよ?そんな彼を狙う人がいませんでしょう?」

平野は半ば呆れたように言った。「暗幕」という組織については一度も耳にしたことがなく、まして今の時代に暗殺者集団なんて信じられなかった。

さすが平野謙の父だけあって、息子の心の中を完全に見抜いていた。

「どうして今の時代に暗殺者集団がないって断言できますか?海外にはまだ傭兵が存在しています。単なる組織として捉えればいいんです。最初は俺だって、そんなものが存在するなんて信じません」

「じゃあ、今は信じますか?」

平野はため息混じりに呆れた顔をした。まるで普段は仏も幽霊も信じていないくせに、テスト前だけ神社にお参りに行くようなものだ。「おい、このバカ息子、親父の話を遮るんじゃない!」平野謙のお父さんは怒鳴り声を上げ、「ちゃんと聞け、今回ばかりは冗談ではありません」

彼は声のトーンを下げ、厳しい表情で言った。「暗幕という組織は、海外に拠点を持つ暗殺者集団です。その勢力はほぼ全世界に及んでいます。そんな連中が狙うような人物には、相当なバックグラウンドがあるに違いありません。須山がただの大学生だと言うなら、彼の周りにそんな連中に狙われるような人物がいるか、よく考えてみます。そして、その人物に警告を伝えて、しっかりと備えさせましょう」

今回は幸運だったが、次回もそうとは限らなかった。

平野謙はふざけた態度を捨て、真剣な顔で父親に約束した。「分かりました。いとこが目を覚ましたら、しっかり話をします」

そう言って電話を切り、彼は深く考え込んだ。

父親が言うことはいつも正確だった。つまり、暗殺者が送り込まれたのは確かだが、その標的は必ずしも須山ではなかった。

平野は須山の側にいたあの女の子を思い出した。まさか、彼女が狙われているのか?

須山が目を覚ましたら、確認してみよう。

ちょうどその時、看護師がやってきて、平野に知らせた。「先ほど救急で運ばれてきた二人が目を覚ましましたよ」

平野は少し驚き、「こんなに早く!」と声を上げた。

平野謙は特に言葉を交わさず、急いで二人の病室へと足を運んだ。病室のドアをそっと開けると、窓の外を見つめた須山と、隣で深い眠りに落ちていた美咲が目に入った。

その瞬間、彼はすべてを理解した。緊急搬送された二人のうち、目を覚ましたのは須山だけで、美咲はまだ麻
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