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美少女との即日婚、冷酷な彼氏からの溺愛
美少女との即日婚、冷酷な彼氏からの溺愛
Author: 伊藤十三輝

第1話

帝豪ホテル。

プレジデンシャルスイートには、吐き気を催すほどの男女が情事後の匂いが満ちされていた。

きつく抱き合っていた男女を見つめ、橋本美咲は顔に嘲笑のような微笑みが浮かんでいた。

明日、黒崎拓也との結婚式があるため、美咲はわざわざスーツを届けにホテルへ来た。しかし、こんな場面に遭遇するとは夢にも思わなかった。もしここに来なければ、自分の妹が婚約者と関係を持っていたことに気づくことはなかっただろう。それを考えると、彼女はこぶしをぐんと握りしめた。

黒崎拓也と付き合った五年間が、すでに泡になってしまった!

橋本月影は両手で黒崎拓也の首にしっかりと回って、涙で真っ白になった小さな顔を濡らしながら、悲しそうに泣いていた。

「お姉ちゃん…あたしとたっくん、本当に気が合うの…お願いだから、あたしとたっくんのこと、許して!」

そんな話を聞いた黒崎拓也が軽く眉をひそめ、自分が好きな女が傷つくのを恐れるのように、彼女をしっかりと抱きしめた。

彼はほっそりした指でそっと橋本月影の背中を撫でながら、ため息をついて言った。

「月、俺が愛しているのは君だけだよ。それは何度も言っただろう?だから、彼女に許しを求める必要なんてないんだよ」

黒崎拓也の優しい声には、溺愛と包容が溢れていた。

しかし、その優しい言葉は橋本美咲の耳に届くと、鋭い刃のように彼女の心に深く突き刺さった!

このような場面を見た美咲は皮肉な笑みを浮かべ、軽い口調で言った。

「いいわ、それじゃあ、私は二人を許してあげる」

そんな話を聞いた橋本月影は一瞬呆然としたが、すぐに鼻に掛けるような表情に変わり、まるで挑発するかのような眼差しで美咲をじっと見ていた。橋本月影は「橋本美咲、あなたが五年間も付き合った黒崎さんも、結局は私の魅力に負けちゃったのよ」と思っていた。

美咲は胸の奥に燃え上がった怒りを抑えるように深呼吸をした。美咲の様子を見た橋本月影は、知らん顔をしてわざと彼女を刺激するように言った。

「お姉ちゃん、明日は私と黒崎さんの結婚式だから、絶対に来てね!」

「ふん、五年間も付き合った男が明日ほかの女と結婚するのを自分の目で見るなんて、さぞかし辛いでしょうね」と橋本月影は意気揚々と思った。

そんな話を聞いた美咲は信じられなかった表情で彼女を見つめた。こんな恥知らずなことを、橋本月影はどうして平然と言えるのだろうか?

しかし、彼女は話す隙をまったく与えず、ため息をついて無邪気な目で美咲を見つめながら続けて言った。

「お姉ちゃんからの祝福が欠かせないの。だから、絶対に心から「おめでとう」って言ってね。だって、私たち姉妹なんだから」

「いいわ」

美咲は彼女を千切る思いを抑え、辛うじて背を向けて、ほうほうの態でスイートから逃げ出した。

あんな気持ち悪い二人のために涙を流すことはないと思っていたのに、涙は抑えきれずに勢いよく溢れ出てきた。

涙が口の中に流れ込み、その苦い味を感じると、元々悲しかった気持ちがさらに悲しくなった。

五年間付き合った男が、ただクズ男だったなんて!そうしなければ心の中の悲しみがぶちまけられないように美咲は狂ったように大通りで走り続けた。突然、大通りで鋭いブレーキ音が響き、その瞬間、黒いロールス・ロイスが彼女の前に急に停まった。

目の前に停まった高級車に驚いた美咲は、血の気が引いて顔が真っ青になり、そのまま意識を失って倒れてしまった。

ドライバーの山田は高級車から降り、素早く車の前に駆け寄った。地面に倒れていた美咲を見ると、おどおどした声で車内の大物に叫んだ。

「氷川さん、彼女が気を失いました」

「病院へ連れて行け」

のこのこした落ち着いた男の声が車内で響いた。しかし、その声は冷たく感じられた。

ドライバーは急いで気を失われた美咲を助手席に抱きかかえ、鈴木グループ傘下の病院へ向かった。

目を覚ますと、すでに消毒液の匂いが漂っていた病室にいた。刺激的な匂いを嗅いだ瞬間、美咲が呆然とした。

次の瞬間、我に返った美咲は驚いた表情で、「どうして私が病院にいるの?」と呟いた。

フレンチドアに立っていた男が小さな声を聞くと、冷たい口調で話した。

「ここは病院だ。先に大通りで私の車に驚かされ、失神してしまった」

「クズ男に裏切られた上に、車にぶつけられたなんて、自分は一体どれだけ運が悪いんだろう」とそれを思った美咲が仕方なく苦笑した。

しかし、しばらくして彼女は落ち着くなり、冷淡に言った。

「それじゃ、賠償金を払って!」

氷川颯真はベッドのそばに立ち、冷たい表情を浮かべならが美咲に聞き返した。

「賠償金?」

突然近づいてきた男に驚かされた美咲は寸前のきれいな顔を見つめ、息をしたのを忘れるほど呆然した。

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