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第80話

長谷川千夏は橋本美咲を連れて会計を済ませ、怒りに満ちたまま火鍋専門店を出た。

店員はその姿を見て心配になった。もしかして彼らの対応が行き届かなかったせいで、客が怒っているのかと考えた。しかし、あのテーブルの客のリクエストを思い返してみると、確かに全て客の指示通りに行われていた。多分、他に何か原因があるのだろう。

彼はそう推測した。

長谷川千夏は後ろの店員の考えなど知らず、ただ怒りが爆発しそうな気分だった。人通りの少ない場所に、橋本美咲を連れて行き、座らせてから、厳しい目つきで美咲を睨んだ。

「橋本美咲、度胸があるわね、体のことを私に隠すなんて。それに、あんな油っこい火鍋を食べに行くなんて。あんたが食べでいいものなの?」

橋本美咲も自分が悪いと分かっていた。彼女は小さく縮こまって、無垢な小鹿のような目で、親友をなだめようとした。「私、火鍋がどうしても食べたくて。それに、医者が言ったことは覚えてるよ。今回だけだから、大丈夫だよ」

長谷川千夏は橋本美咲の額を指で突いた。「食べることしか考えてないの?健康を無視して。一回だけなら大丈夫かもしれないけど、今回があったら、その次もあるでしょ。そしてさらに、次の次も…あんたのことはよく分かってるんだから」

ああ、怒り全開の親友は本当に怖かった。橋本美咲は何も言えず、ただおとなしく叱られるしかなかった。

橋本美咲を叱り続けたせいで、長谷川千夏も疲れてしまった。彼女は美咲の隣にドスンと座り、バッグからペットボトルの水を取り出して、半分以上飲んでから、少しだけ気持ちが落ち着いたと感じた。

橋本美咲は慎重に長谷川千夏を見て、親切に自分の小さな扇子を取り出して、千夏に扇ぎ始めた。「千夏、千夏、もう怒らないよね?」

長谷川千夏は目をむいて怒鳴った。「怒らないわけないでしょ!全部あんたのせいよ」

橋本美咲は凄く後ろめたく感じ、さらに長谷川千夏に一生懸命扇ぎ続けた。

長谷川千夏はやっと冷静になり、橋本美咲の口を容赦なくつまんだ。「言いなさい、女。まだ私に何を隠している?早く言え」

橋本美咲は口を尖らせた。「口をつまんでたら、どうやって言えばいいの?」

長谷川千夏はその言葉を聞いてから、ようやく橋本美咲を放した。千夏は目を上げて、早く話すように示した。

橋本美咲は苦笑しながら答えた。「最近特に変わったことはなかったよ。
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