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第76話

もう随分と探しても、橋本美咲は長谷川千夏の姿を見つけられず、少し不思議に思った。千夏はいつも時間を守る人なのに、どうしてまだ来ていなかったのだろう?噂をすれば影が差すように、長谷川千夏の姿が入口に現れた。橋本美咲は目を輝かせ、思わず駆け寄ろうとしたが、突然足を止めた。

長谷川千夏の傍らには、身長約180センチ、ベージュのトレンチコートを着た、陽気で爽やかな雰囲気の高身長の男性がいたのを見えた。

橋本美咲は少し硬直した。まさか、前回、千夏に惚気すぎたせいで、今度、千夏が狂気じみて彼氏を連れてきて、美咲に惚気るつもりなのか?一瞬、橋本美咲は後悔の念に駆られた。どうして自分は、一時の気の迷いで、長谷川千夏の要求に応じたのか。最初から、一緒にショッピングに行くのを断ればよかった。最悪の場合、氷川颯真を連れてくればよかったのに。今はとても気まずかった。

橋本美咲はその場で固まってしまったが、長谷川千夏とその男は親しげに並んで立ち、手にはミルクティーを持っていた。さらに、その高身長の男性は、さりげなく千夏の服を整えた。

よし、決めた。まずは氷川颯真を連れてこよう。橋本美咲はそう思い、こっそり退散しようとした。

しかし、目ざとい長谷川千夏が、すでに橋本美咲の姿を見つけた「美咲ちゃん、こっち!」

橋本美咲は今、本当に絶望した。どうして呼んだの?見なかったふりをしてくれればよかったのに…

こうなってしまった以上、仕方がなかった。

橋本美咲は意を決して前に進み、無理やり笑顔を作って長谷川千夏に尋ねた。「こちらの方は…」

長谷川千夏は両手で自分の顔を押さえ、少し恥ずかしそうに言った。「もう、言ったじゃない。私の彼氏よ」

もちろん知ってるわよ、彼氏だってことは!紹介してくれないの?幸いなことに、長谷川千夏はすぐに、親友の気まずさに気づき、急いで声を出した。「ごめんね、紹介しなきゃね。こちらは私の彼氏、佐藤直樹だよ。まっすぐの『直』で、樹海の『樹』よ」

千夏は照れくさそうに頭を掻いた。

橋本美咲は無表情で、確信した。この女はわざわざ惚気に来たんだ。前回の仕返しのために違いなかった。

美咲はこの二人がまだ、何か仕掛けてくるのか、見届けることにした。

長谷川千夏は彼氏の手を引いて、彼に紹介した。「こちらは私の親友、橋本美咲。見て、嘘じゃないでしょ?本当に親友とシ
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