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第71話

「うちの状況は大体こんな感じだ。

「そういえば、美咲の実の両親を探してみようか?」氷川颯真は心配そうに橋本美咲を見つめた。やはり、あの出来事のせいだろう。普段、可愛い妻はこういう話を全くしなかったのだから。

橋本美咲は氷川颯真の突然の提案に驚いた。「私の親を探す?」

その瞬間、美咲は少し心が動いたが、しばらく考えた後、冷静さを取り戻した。「やっぱりいいわ」美咲は拒否した。

「どうして?」氷川颯真は理解できなかった。「実の両親を見つけた方がいいじゃないか?」

橋本美咲はしょんぼりと頭を下げた。「見つけたい気持ちはあるけど、でも、彼らは私を捨てたんだから。歓迎してくれないでしょう」美咲は苦笑いを浮かべた。

氷川颯真は心を痛めながら橋本美咲を見つめた。彼女が先天性心疾患を抱えていることを思い出し、慰めるように話した。「そんなふうに考えないで。美咲ちゃんの病気は、生まれた時からあったんだ。医者が気づくはずだし、君が生き延びたということは、きちんと療養された証拠だよ。愛していないわけがない」

この言葉を聞いて、橋本美咲は長い間、干からびていた植物が、突然水を浴びたように、パッと顔を上げた。

「本当に?」

氷川颯真は頷いた。「もちろん本当さ。すぐに人を使って探してみるよ」

橋本美咲の顔が再び引きつった。何かを思い付いたようだった。「やっぱりやめましょう」

氷川颯真は人を呼ぼうとした動きを止め、橋本美咲の方を見た。その目は、はっきりとした疑問を投げかけていた。

その理由を知りたがっていた。

橋本美咲は悲しそうに氷川颯真を見つめた。「もう何年も経っているから、見つけるのは難しいわ。やっぱりやめましょう」

氷川颯真はため息をついたが、結局は可愛い妻の意志に従った。

実は橋本美咲にはもう一つの心配事があって、颯真には言えなかった。たとえ実の両親がわざと自分を捨てたじゃなくても、なぜこんなに長い間、自分を探しに来なかったの?もしかしたら、見つけられなかっただけかもしれない。だが、それらも重要ではなかった。

重要なのは、彼らがすでに新しい子供を授かってるかもしれないということだった。さらに、自分が記憶を持ち始めた時には、すでに橋本家の邸宅にいたから。ということは、かなり幼い頃に置き去りにされたということだった。

人さらいに攫われた?まあいいや、そんなことは
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