共有

第46話

橋本月影が言葉を失ってその場に立ち尽くしていたのを見て、橋本美咲の気分は少しだけ晴れた。

美咲は自分の感情を落ち着かせ、冷たく言った。「で、何しに来たの?」

橋本月影は今度こそ目的を思い出した。「特に用事ってほどでもないけど、ただお姉ちゃんのことが心配だから。いつ家に帰ってくるの?」

そう言って、彼女は涙目で橋本美咲を見つめた。「お姉ちゃん、たとえお母さんと喧嘩しても、そんなに勝手に家を出るなんて。みんな心配してるんだから」

橋本美咲は冷たく笑った。「心配?何を心配することがあるの?

「もしあんたが言う心配が、妹と元カレが一緒になって、両親は私が傷つくのが嫌だったから。妹と一緒にそのことを4年間も隠したことを指すなら、その心配はいらないわ。私には重すぎるから」

橋本月影は再び言葉に詰まった。こんな大勢の前で、そのことをあからさまに言うなんて、彼女には羞恥心がなかったのか?

「お姉ちゃん、どうしてそのことを言ったの?」

「どうして言っちゃいけないの?」橋本美咲は「不思議そうに」橋本月影を見た。

内心では分かっていた。浮気したのは黒崎拓也で、愛人は橋本月影だった。こんな大勢の前でばらされると、恥ずかしかったから、月影は言ってほしくなかったろう。

しかし、あえて言うわ。言わなければ、喬橋本月影と黒崎拓也が結託して、事実を捻じ曲げてしまうからだ。この前のテレビでの一件もそうだったじゃないか。

ふん!美咲は不機嫌そうに橋本月影に向かって手を振った。「もしこの話をしに来ただけなら、もう帰っていいわ。

「わざわざ優しいふりをする必要はないわ。家に私がいないほうが、嬉しいでしょ?」

橋本月影は慌てて橋本美咲を見つめた。「違うの!本当にお姉ちゃんのことが好きなんだ!」

橋本美咲はもう彼女に関わりたくなかった。橋本月影が帰りたくないなら、ロビーに立たせておけばいいわ。

そして、美咲は橋本月影の話を無視し、彼女を避けるように、エレベーターに向かって歩き出した。

美咲にはまだたくさんの仕事があって、橋本月影のような人と長々と話している暇はなかった。

「お姉ちゃん、もしかして社員を引き抜いたから、怒っているの?」

橋本美咲は足を止めた。

「普段はそんな態度じゃなかったのに、いいものがあればいつも譲ってくれたじゃない。

「もしそれが理由なら、私は...」
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status