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第45話

氷川颯真は少し無実そうな顔をして、その澄んだ目にはいっぱいの悔しさがこもっていた。「何時、引き寄せたって言うんだ?」

橋本美咲は白目で彼を見た。「まだ言うの?一緒に出かけると、いつもみんなの目はあなたに向かってるじゃない。

「しかも、その中には美人も少なくないわ。度胸のある子は直接番号を聞いてくるんだから」話すうちに、美咲はますます嫉妬を感じた。

氷川颯真は笑って、橋本美咲の頭を優しく撫でた。「番号を聞いてくる子たちが美人だって?僕の妻のほうがもっと綺麗だよ」

「お世辞ばっかり!」橋本美咲は顔をそむけ、氷川颯真を見ないようにした。

氷川颯真は笑って何も言わなかったが、心の中では少し困っていた。

おバカさん、本当に心が広いな。番号を聞いてくるのは女の子だけじゃないんだぞ...

あれら発情したオスたちは、妻を見ると足が止まった。何人もが話しかけようとしたけど、全部僕が阻止したんだよ。君が知らないだけだった。

もちろん、できるなら、妻には永遠に知られたくなかった。

妻には僕だけいれば十分だった。

橋本美咲は氷川颯真の心の中の考えを知らなかった。しばらくしても自分を宥めに来ないのを見て、ぷんぷん怒って歩いて行った。

氷川颯真はすぐに追いかけると、二人は美咲ちゃんの漫画会社に向かって歩いて行った。

橋本美咲が会社のロビーに入ると、さらに気分を悪くさせた人物を目にした。

橋本月影だった...

彼女を見るや否や、橋本美咲はすぐに引き返そうとした。美咲は全くこの猫被りの妹と関わりたくなかった。さらには、月影の無駄口に付き合う暇もなかった。

しかし、遅かった。橋本月影は既に橋本美咲を見つけた。

月影の目が輝き、数歩で橋本美咲の前に立った。

「お姉ちゃん!」

まあまあ心地よい声が、橋本美咲の耳には非常に不快に響いた。

美咲は不機嫌に言った。「何の用?」

橋本月影の目にはすぐに涙が浮かんだ。「お姉ちゃん、なんで私に怒るの?」

橋本美咲は不思議そうに橋本月影を見つめた。「どこか怒ったっていうの?小芝居は、家に帰ってからして!」

橋本月影の涙はこぼれ落ちた。

以前なら、多分、橋本美咲は月影を慰めた。

しかし、美咲は、今では家と仲違いしたから。橋本月影を気にするまでもなく、良い姉妹のフリをする必要もなかった。ましてや月影は自分の多くの社員を引き抜
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