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第49話

橋本美咲は表情の異なる黒崎拓也と橋本月影を見て、心の中で一抹の満足感を覚えた。美咲は受付のお姉さんに手を振って呼びかけた。「有紀、警備員を呼んで、この二人を追い出して」

有紀は橋本美咲のご機嫌な様子を見ると、察しが良いように、すぐに外へ走って、警備員を呼び入れた。

警備員は黒崎グループの社長と橋本家の二番目のお嬢様を見ると、少し困惑した。しかし、自分の上司がやらせていたことだから、従うことにした。

それでも、彼は礼儀正しく黒崎拓也と橋本月影の前に歩み寄った。「黒崎様、橋本様、お帰りください」

橋本月影の美しい顔が歪み、橋本美咲に向かって叫んだ。「よくも私を追い出したな!」

橋本美咲は気にすることなく橋本月影を一瞥し、警備員に向かって指示を出した。「早くして」

押しの強い警備員を前に、橋本月影は歯を食いしばった。

月影はまだ呆然としていた黒崎拓也の腕を引っ張った。「たっくん、行こう」

黒崎拓也はまだショックから抜け出せなかった。きょとんとした所で、橋本月影に引っ張られて、美咲ちゃんの漫画会社の玄関から外に出た。

帰る途中、橋本月影の心には怒りで満ちていた。橋本美咲、覚えていなさいよ!

子供の頃から私には勝てなかったから、今さら、私の手のひらの中から抜け出せると思うな。世界一の富豪を夫にしたからって、何?あんたのそのゴミ会社が、どうなるか見ものだわ。

視点を橋本美咲の公司に戻すと、橋本月影と黒崎拓也という厄介な二人組が去った後、橋本美咲は嬉しそうに鼻歌を歌いながら、氷川颯真を自分のオフィスに連れて行った。

道中、橋本美咲を見かけた社員たちは、みんな挨拶をした。

「ボス、こんにちは」

橋本美咲は頷いた。

社員は多くなくて、五、六人ぐらいだった。橋本美咲はこの少ない人数に慣れていたようで、特に気にしていなかった。

しかし、氷川颯真は眉をひそめた。

橋本美咲のオフィスに着くと、氷川颯真は心配そうに口を開いた。「美咲ちゃん、どうして会社の社員がこんなに少ないの?経営がうまくいっていないのか?」

氷川颯真の質問を聞いて、橋本美咲は少し困った様子だった。

彼女は苦笑しながら答えた。「経営がうまくいっていないわけじゃないわ。ただ、会社を始めてまだ一ヶ月も経ってないのに、妹の橋本月影も会社を始めて、わざわざうちと競争してくるのよ。

「しかも、うち
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