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第50話

橋本美咲は目を見開いて、氷川颯真が携帯を取り出し、数回押して電話をかけたのを見ていた。

「もしもし、小栗、管理職の人材を何人か手配してくれ。ある会社で、彼らに事業計画を立ててもらいたい。

「場所?美咲ちゃんの漫画会社だ。

「そう、君たちの社長夫人の会社だ」

橋本美咲は氷川颯真が電話を終えるのを静かに待っていた。颯真が電話を切った瞬間、美咲は何かを言おうとした。

しかし、氷川颯真は次の電話をかけ始めた。

「千田秘書、東大美芸の学生が我が社に応募してきたろう。彼らを美咲ちゃんの漫画会社に配属してくれ。僕の指示だと言ってくれ」

一連の指示が出され、事態は次第に整然としてきた。

電話を終えた氷川颯真は、何か言いたげな橋本美咲を見て少し疑問に思った。「美咲ちゃん、どうしたんだい?」

橋本美咲は悩みながら首を横に振って、言葉を飲み込んだ。

氷川颯真はため息をついた。「愛しい奥さん、何か言いたいことがあれば直接言ってくれ。夫婦なんだから、秘密はないはずよ」

橋本美咲は恥ずかしそうに頭を下げ、唇を微かに動かした。「颯真、ありがとう。人材や画家を見つけてくれて。でも、ここで言わなければならないことがあるの。以前、会社の経営がうまくいかなくて、流動資産がほとんど残っていないの。

「これだけの人に支払う給与は…すぐには賄えないわ」

どもって言葉を終えた橋本美咲は、恥ずかしくて穴にでも入りたいような気分だった。こんな恥ずかしいことを氷川颯真に話さなければならなかったなんて!

彼はきっと自分を軽蔑するに違いない。会社の経営状況をこんなに悪くしたなんて。じっとも颯真のように企業を世界一にすることができるとは到底思えなかった。

颯真は一体私の何を気に入ったの?!橋本美咲はあれこれ考え始めた。

「美咲の会社はずっと利益を出せないままなのか?」

「そんなことはないわ!」

橋本美咲は頭を上げ、目に強い決意を浮かべた。「橋本月影の圧迫のせいでこうなっているだけで、チャンスがあれば必ず会社を大きくして、成功させてみせるわ!」

これまで会社がうまくいかなかったのは事実だった。しかし、もし誰かが橋本美咲に、例えあいつらに足を引っ張られなくても、会社はうまく行ってなかっただろうって言ったら…

橋本美咲は、真っ先に反論しただろう。

そして、もっと努力して証明してみせた。

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