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第55話

電話を切った橋本美咲は、頭が痛くなるほど怒っていた。席に座っていて、頭の中が騒がしくてたまらなかった。

氷川颯真は心配そうに橋本美咲のそばに歩み寄り、手を伸ばして彼女の額に触れた。「大丈夫か?」

橋本美咲は首を横に振った。「大丈夫、もう慣れてるから」

橋本美咲の言葉を聞いて、氷川颯真はますます、彼女を哀れに思った。「これからは僕が守るから」

橋本美咲は頷き、少し躊躇いながら口を開いた。「颯真、この後…」

話の途中で言葉が詰まり、美咲はうなだれた。「やっぱり言わないでおくわ」

氷川颯真は無念そうに言った。「何かあったら直接言って。話半分でやめないで。僕たちは約束しただろう、夫婦の間には秘密を隠さないって」

橋本美咲はうつむいたまま、悲しげな声で言った。「秘密なんかじゃないの。ただ、周囲の警備を強化してほしいだけ。母が直接押しかけてくるかもしれないから、彼女に会いたくないの」

氷川颯真は頷いた。「それなら簡単だわ。周りの警備員に言っておくよ。美咲のあの愚かな母親がきっと入れないわ」

それでも、橋本美咲はまだ憂鬱そうだった。

氷川颯真は橋本美咲の青白い唇を見て、心配になった。

前回も美咲ちゃんはこうだった。気分が悪くなると、唇が白くなり、少しめまいがした。まさか体に何か問題があったの?

氷川颯真はますます不安になった。すぐに橋本美咲を引っ張り上げて、彼女の精神状態を確認した。「美咲ちゃん、具合が悪いのか?」

橋本美咲は氷川颯真の力に従って立ち上がった。「大丈夫、ちょっとめまいと胸が苦しいだけ。恐らく低血糖だわ」

氷川颯真は慎重になった。「以前の検査報告には何か書いてあった?」

橋本美咲はますますめまいがして、苦しそうに氷川颯真の腕を掴んだ。そして、ポケットからキャンディーを取り出して口に入れた。すると、顔色が少し良くなり、落ち着いてから氷川颯真の質問に答えた。

「病院があまり好きじゃないから、子供の頃から詳しい検査は受けたことがないわ。でも、いつものことだから。母が言うには低血糖だって」

「母が低血糖だって言った?」

氷川颯真は信じられないように橋本美咲を見つめた。橋本家は娘を虐待していたの?健康診断は普通の人でさえ、詳しくするべきだった。たとえ病院が嫌いでも、個人医を呼ぶこともできたはずだ。娘が不調を訴えていたのに、ただ低血糖だと片付
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