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第60話

執事を早めに帰らせた氷川颯真は、自分で運転してきた車の中に座った。彼の手はハンドルに置かれ、指がリズムを刻むようにハンドルを叩いていた。

先ほどは気にしていなかったが、橋本美奈の態度をよく考え直すと、氷川颯真は何か違和感を覚えた。家族なら、どんなにもう一人の子供を嫌っていても、その健康状態には気を配るはずだった。橋本美咲の体調を全く知らないというのはあり得なかった。

さらに、橋本美咲の病気は普通の病気ではなく、先天的な心臓の異常だった。普通、こういう子は生まれつき病気を持っていて、細心の注意を払って育てないと、生き延びることができなかったはず。しかし、橋本美奈の態度を見る限り、彼女たちはそのような経験をしたことがないように見えた。

今、氷川颯真は疑念を抱いた。自分の妻は本当に橋本美奈の娘だったのか?疑問は尽きなかった。このことは徹底的に調べないと…

氷川颯真は眉をひそめ、携帯を取り出して、先ほどの医者に電話をかけた。医者は氷川颯真からの電話に驚き、社長夫人にまた何かあったのかと思い、急いで電話を出った。「もしもし、社長。奥様の体調にまた何か問題が?」

氷川颯真は怒りを抑えながら答えた。「妻は大丈夫だ。電話をしたのは別の頼みがあるから」

患者の体調に問題がないと聞いて、医者はほっとした。「どんなご用でしょうか、社長」

「先ほど美咲ちゃんの体を検査した時の血液サンプル、まだ残っているか?」

医者は一瞬戸惑いながら答えた。「はい、まだ残っていますが、社長、何をするつもりでしょうか?」

氷川颯真は一瞬考え込んだ。「その血液サンプルからDNAを抽出してくれ。数日後に、別の毛髪サンプルを持って行く。それと比較して、親子関係があるかどうかを調べて欲しい」

医者は氷川颯真のその命令に当惑した。一体社長が何をしようとしているのか全く理解できなかった。よく分からなかったので、もう考えるのをやめた。社長が何をしたいのかは、自分には関係ないことだった。とにかく社長の命令だから、言われた通りにした。

「はい、社長、分かりました」

氷川颯真は電話を切った。もし美咲ちゃんが本当に橋本家の実の娘でないなら、橋本家の彼女に対する態度も納得がいった。

颯真は目を伏せ、車のエンジンをかけて家に向かった。しばらくして彼は自分の別荘に戻った。

氷川颯真は、そっと橋本美咲のベッドの
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