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第64話

朝の小さなハプニングを経て、二人とも朝食を終えた。

橋本美咲は氷川颯真のネクタイを少し整えると、二人とも仕事に出かける準備をした。家でのんびりしすぎたけど、仕事を忘れるわけにはいかなかった。

氷川颯真はまず橋本美咲を会社まで送った。美咲がオフィスに入るのを見届けてから、自分のオフィスに戻った。

颯真はデスクに座り、今日の書類を開いた。パソコンで少し入力したところで、携帯が鳴った。画面を見ると、医者からの電話だった。彼の表情が急に真剣になった。

「もしもし、調べさせたことはもう分かった?」

電話の向こうから医者の声が聞こえてきた。「はい、調査結果が出ました。奥様の血液サンプルから抽出したDNAと、社長が持ってきた毛髪のDNAを比較した結果、二人の間には血縁関係がないことが判明しました」

その言葉を聞いて、氷川颯真は黙り込んだ。ようやく、自分の妻が橋本家で、なぜあまり歓迎されていなかった理由や、両親からの愛情が少なかった理由が分かった。

それは、妻が橋本家の実の娘ではなかったのだった。だから、彼らはたいてい、もう一人の娘をより可愛がった。

「分かった。このことは絶対に誰にも漏らさないでくれ。もし漏らしたら、ただじゃ済まないぞ」氷川颯真は厳しい口調で医者に警告した。

たとえ氷川颯真が見えていなくても、医者は胸を叩きながら、断言した。「社長、ご安心ください。私は多少の欠点がありますが、基本的な医療倫理もあります。患者の個人情報は絶対に漏らしません」

氷川颯真は頷き、電話を切った。

電話を切った後、颯真は少し茫然とした。

この事実を知ったところでどうするの?直接妻に、実は君は橋本家の娘ではないから、彼らが偏愛するのは当然だと?

それとも、妻に何も言わずに、隠しておくべきか?

どちらの選択肢も正しくないように思えた。

ああああ!

氷川颯真は髪を掻きむしり、苛立たしくデスクに頭を埋めた。なんでこんなことを調べたんだろう?今、この結果をどうやって妻に伝えればよかったの?本当に頭が痛かった。

颯真はしばらく考えた後、電話を取り、橋本美咲の番号にかけた。

橋本美咲はすぐに出た。「もしもし?」

橋本美咲の声は疑問に満ちていた。「颯真、どうしたの?」

氷川颯真は口を開いたが、その言葉を言い出せず、しどろもどろに一言だけ言った。「美咲が恋しいから」

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